インタビュー 根来 隆臣(ヴィオラ奏者)
2017-09-01
— ヴィオラ奏者になる前は、会社員だったんですね。
イトマンという商社に勤めていたんです。会社が吸収合併されることになって、まあいいかって感じで辞めてしまいました。楽器を始めたのは大学から、大阪外国語大学の学生オケでです。会社員時代も楽器は弾いていたのですが、所詮アマチュア。貪る様に音楽を聴いていたので、頭でっかちではありましたが、演奏の世界に飛び込んでみたいなという思いがありました。
楽器でいけるという確信はありませんでしたが、常に自分を修正して、技術を変えてきたつもりです。自分の描くイメージに楽器を弾く技術が追いついたら、続けるかどうか判断しようと思っていたのですが、技術は1日にしてならず、できたと思ったらまた一からやり直し。そうこうしているうちに在籍20年を超えてしまいました。
楽器でいけるという確信はありませんでしたが、常に自分を修正して、技術を変えてきたつもりです。自分の描くイメージに楽器を弾く技術が追いついたら、続けるかどうか判断しようと思っていたのですが、技術は1日にしてならず、できたと思ったらまた一からやり直し。そうこうしているうちに在籍20年を超えてしまいました。
— 楽器を弾き続ける原動力は?
あくまでも楽器は道具であって、音楽を自分の頭の中から出す作業にできるだけ集中しようと思いました。ギャップは時間をかければ、ある程度埋まってくるのですが、技術だけを磨いていくことが、果たして面白いかどうかは疑問です。
— オーケストラで演奏していてよかったなと思う瞬間は。
細かい音型で人の伴奏をしている時に完璧に合わせられた時なんですけど、メロディを受け持つパートが変わるたび、そこに合わせなければならないジレンマもありなかなか難しいです。ヴィオラの中でも何人もいるから、後ろの方でそれをこっそりコントロールしたりしてね。ヴィオラって、中間管理職のような取りまとめ役であって、人のアラをいつも探している嫌味な人間という側面も持つと思います。
— 文章も書いていましたね。書く行為は演奏とは違うと思いますが。
批判はしないと決めて、それまでどういうふうに音楽を受け取っていたのかを、面白おかしく書いてみました。人の演奏を聴くのは、演奏の解釈を聴くためで、演奏をする上で「こうしたい」と思い過ぎて邪魔になることもあるけれど、自分の中に貯めておかないと、いろいろな指揮者に応えるためのパレットがなくなってしまう。指揮者の要求を咀嚼するために、演奏の種類をたくさん持っておきたいなとは思います。
— 20数年在籍して、オーケストラのキャラクターは変わりましたか。
大きくは何も変わっていません。ただ、技術的には変化があります。ある意味カメレオン的なオーケストラだと思いますし、それが良い意味でもっと発展して欲しい。どんな指揮者が来ても、その指揮者が思っているように対応できるようになれば、そんな強いオケはないですよ。でもザンデルリンクさん時代の、ここぞという時にみんなでスイッチが入る大阪交響楽団らしさは、まだ残っています。
— 理想の指揮者とオーケストラの関係は?
恋愛関係のようでもあり、ビジネス・パートナーでもある。そこには乗っかれるけど、違うよということも言える。うまくその気にさせてくれるけど、冷静な目でも見てくれる指揮者だったらやりやすいですね。
根来隆臣写真:(C)飯島 隆
聞き手/小味渕彦之(音楽学・音楽評論)
~プログラムマガジン2017年度7・8月号掲載~