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楽団員紹介

インタビュー 矢巻 正輝(トロンボーン副首席奏者)

2017-05-01
— 入団して何年になりますか。
 
 阪神・淡路大震災の年に大学を卒業して、次の年の1996年入団です。だからもう21年ですね。長いという気持ちはないんですが、オーケストラの中のメンバーや、他の楽団のトロンボーン奏者を見渡した時に気がつくことはあります。それでも、自分の中で何かが変わったということはありません。
 
— トロンボーンを始めたのは。
 
 金管楽器奏者の御多分に洩れず、中学校の吹奏楽部からだったんですが、音楽にこうしてどっぷりと取り組むつもりはなかったんです。友人に誘われて始めました。その後高校に入ると、中学のライバル校でトロンボーンを吹いていた顔見知りが同じ高校に進学していて、「オレは入部届出したから」って言われて、自分も楽器を続けることになったんです。今でもその3人で楽器を吹いたり、飲みに行ったりするんですよ。
 
— いつ頃、プロの演奏者になろうと意識しましたか。
 
 親が教員をやっていて、音楽大学に進学をする条件も教員免許を取ることでした。それでも、やりたいことは何だろうと思っている中で、自分自身でも、奏者になるのかならないのかの踏ん切りがつかなかったんです。相愛大学にいた4年間で自分なりに一所懸命やってきたんだけども、自分がどのあたりのレベルにいるのかが、わかりませんでした。そんな中で卒業が近づき、卒業演奏会や新人演奏会に出演することで、大学の外に出て行く機会が増えていった時に、「続けていきたい」という気持ちがふつふつと湧いてきたんです。そこで、親に専攻科に進学したいという話をしたのですが、当然教員になるものだと思っているから納得しない。実家に帰るたびに話をして、それじゃ結果を出さないといけないと思って、頑張って練習をして、オーディションに受かることができました。
 
— オーケストラの中でのトロンボーンの魅力って何でしょう。
 
 トランペットほど華やかではないし、ホルンほど美しい旋律が出てくるわけでもない。正直、吹いていない休みの部分も多いんです。それでも最大の魅力は、スライドの部分を使って出すハーモニーだと思うんです。曲全体の雰囲気を大きくあらわすことができます。音域的には成人男性の声の高さですが、バルブやロータリーではないスライドというひと世代前の仕組みによって、人の声で歌うような表現ができるところかなと思います。
 
— オーケストラで演奏していてよかったなと思う瞬間は。
 
 聴きに来てくださる方にこんなことを言われたんです。チケットを買った後、演奏会の当日まで心待ちにして、仕事したり生活をしたりしている。演奏会の2時間だけでなく、コンサートが始まるまでの日常がワクワクするんですと聞いて、そんなことができているならうれしいと思いました。震災の年が大学卒業だったので、友人で集まって自分たちに何ができるのかと話をしたんです。やっぱり音楽しかないという結論だったんですが、僕たちが音楽をすることが、当たり前の街並みのようになりたいなと思うんです。東日本大震災から6年が経った今、オーケストラとして東北に行く機会も多く、改めてそんなことを感じています。
 
矢巻正輝写真:(C)飯島 隆
 
聞き手/小味渕彦之(音楽学・音楽評論)
 
~プログラムマガジン2017年度4・5・6月号掲載~
 
 
 
 
 
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