インタビュー 花石 眞人(パーカッション首席奏者)
2016-11-01
パーカッション首席奏者
花石 眞人
— 打楽器を始めたのは。
花石 眞人
— 打楽器を始めたのは。
中学1年で吹奏楽部に入ってからですね。吹奏楽の楽器はトランペットぐらいしか知らず、まずはトロンボーンに配属が決まったんです。が、実は小学校の高学年の頃から当時流行っていたロックバンドのベイシティローラーズに憧れていて、ドラムセットが棚に入ってるのが見えたんですよ。そこで「先生これやりたい!」と。
— 音楽大学に行くきっかけは。
顧問の先生が勧めてくれて。プロになりたいというよりは追及したいという気持ちが強く、高校1年の春から個人レッスンに通い始めました。でもオーケストラプレーヤーになりたかったわけではないんです。京都市立芸術大学在学中も学外でロックバンドの活動もしていたし、学内では芝居のサークルにも入ってたんですよ。周りは全員美術学部の中で、音楽学部は僕一人。きっと舞台とか、人前で「何か」を共有するのが好きなんですね。だからどういう楽器がじゃないんです。ずっと独学でギターもやっているんですけど、10本ぐらい持っていて今はウクレレ、バンジョーまであります。
— オーケストラの中での打楽器の魅力は何でしょう。
まず弦楽器や管楽器が奏でる旋律があって、そこにハーモニーが付いて、他の楽器も含めてリズムを刻む中で、僕ら打楽器は雑音(ノイズ)に過ぎないのですが、その雑音をいかに楽音に近づけて一緒に音楽を作るかということをしています。弦楽器や管楽器では出せないものを担っているんです。作曲家にとっても最後に加えるスパイスみたいなもので、打楽器で音楽の味をひきしめたり華やかにさせていると思います。
— オーケストラの打楽器ならではの難しさは。
オーケストラは弦楽器が主体なので、一番後ろに控える打楽器は、指揮者に近いところからは距離や時差もあります。オーケストラをひとつにしたいのに、もどかしい思いをすることもありますが、打った音で空気が変わることがあるんです。破裂した瞬間に、ビッグバンじゃないけどホールが広がるように感じますが、聴いている人はそこに感動を覚えるんじゃないでしょうか。シンバルを「ジャン」と鳴らしたり、トライアングルの一音でオーケストラを動かすこともできると思います。
— 打楽器の出番を待っている時は何をしているんですか。
寝てます(笑)。でも微動だにせず一点を見つめているのも不自然だと思いませんか?もちろんちゃんと聴いているし、そろそろ出番だなというのはわかっていて、ステージの上でオンとオフを作っています。お客様の表情を眺めていることも多いし。なるべくリラックスをして自分が演奏する時に精一杯力を出せるように。ただ大きく鳴らせばいいというものではないから。でも、他の楽器からは「休みが多くていいねっ」て言われるし、音出すと大きいって睨まれて、一番ストレスの多い楽器なんです。けれど周りの顔色を見て媚びを売るように演奏することはしたくない。作曲家が望む音楽に対して謙虚にやっていきたいし、聴いていただくお客様のために演奏したいです。
花石 眞人写真:(C)飯島 隆
聞き手/小味渕彦之(音楽学・音楽評論)
~プログラムマガジン2016年度11・12月号掲載~