インタビュー 里屋 幸(アシスタントコンサートマスター)
2016-04-01
— 2006年に入団して10年が経ちましたね。
最初はトゥッティ奏者だったんですが、2年が経って、ちょうどオーケストラに慣れた頃にアシスタントコンサートマスターという役職ができることになりました。それで再びオーディションを受けて、今日に至ります。入団する前はフリーのヴァイオリン奏者として活動していました。様々なオーケストラでエキストラ奏者として演奏していたのですが、私にとっては、オーケストラというものを知るための、今思うとありがたい時間でした。オーケストラでの弾き方というものが、最初はどうしたらいいのかわからなかったんです。ヴァイオリンの後ろの方の席で弾いて、周りの方から見よう見まねで学んでいました。
— オーケストラのヴァイオリン奏者になりたかったのですか。
ヴァイオリンは4歳の時からやっていて、ヴァイオリニストという仕事には憧れていました。ソリストになろうとしている方が、私の周りにはたくさんいたのですが、自分がそうなろうとは思わなかったんです。ただ、職業としてヴァイオリンを弾いていきたいというのは、なんとなくあって、その選択肢として考えられるのが、オーケストラのヴァイオリン奏者でした。オーケストラも小さい時からやっていて、嫌いではなかったんです。母も楽器をしていましたが、させようとしたことはないと言っていました。自分でやると言ったみたいですけど、覚えていません(笑)。小学校から相愛学園の音楽教室のオーケストラに入ったんですが、周りに上手な方がたくさんいて刺激を受けました。その頃の経験は、今オーケストラをやっている基盤になっていると思います。
— オーケストラで演奏していて、幸せな瞬間というのは何でしょうか。
大きい編成の時は、自分の弾いている席からは全く見えない位置で演奏している楽器とヴァイオリンの音が驚くほど一緒になる瞬間があって、その時は大勢で弾いている醍醐味があります。小さな室内楽に近い編成では、みんなの息遣いみたいなものが感じられて、幸せだなと思います。
— アシスタントコンサートマスターの役割は何なのでしょうか。
コンサートマスターには、指揮者とのコンタクト、楽団とのコネクトなど、莫大な量の仕事があって、多くの労力を使います。アシスタントコンサートマスターの役割は、その支えになることです。座る場所が2ndヴァイオリンの近くになるので、他の弦楽器との間に入って、コンサートマスターのしていることが、他の人にわかるようにすることも重要です。オペラやバレエでピットに入った時は、どうしても死角になってコンサートマスターが見えずらい席があるのですが、コンサートマスターがやっていることを代わって伝えようと思って弾いています。また、コンサートマスターがソロを弾いている間に、オーケストラをまとめるのは、アシスタントコンサートマスターの仕事になります。
里屋 幸 写真:(C)飯島 隆
聞き手/小味渕彦之(音楽学・音楽評論)
~プログラムマガジン2016年度9・10月号掲載~