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第247回 定期演奏会   4月12日(月)
山下 一史
横坂 源

2021年4月12日(月)
19時00分開演
 
当初出演を予定しておりました指揮者オーラ・ルードナー氏とソリストのパヴェル・ゴムツィアコフ氏は、新型コロナウイルス感染症に関わる入国制限により来日困難となりました。おふたりに代わりまして山下一史氏と横坂 源氏が出演いたします。なお、曲目に変更はございません。
 
 
 
モデスト・ムソルグスキー(1839-1881)
歌劇「ホヴァーンシチナ」より 前奏曲「モスクワ河の夜明け」
(ニコライ・リムスキー=コルサコフ編)
 
 ムソルグスキーといえば、19世紀ロシアの民族主義的な作曲家グループ“五人組”のひとりである。民衆のありのままの生活に根差した音楽創作を目指した彼らにとって、オペラは、単なる娯楽ではなく民衆を啓蒙する手段であり、歌劇《ホヴァーンシチナ》も、過去の歴史を通じて、ロシア社会の矛盾を告発する意図を持っていた。しかし、その作曲はムソルグスキーの死によって未完におわり、その後、友人リムスキー=コルサコフやソ連時代のショスタコーヴィチらによって上演版が作られたが、それぞれの政治的思惑が色濃く反映しており、いまだに未完の傑作であり続けている。
 オペラの舞台は新旧勢力の対立する17世紀後半のモスクワ。ピョートル1世によるロシアの西欧化改革の開始と、総主教ニコンによる正教会改革を背景に、旧体制を支持する銃兵隊長ホヴァンスキー公が政治的陰謀により失脚する姿と、ニコン改革に反対して集団自決を選ぶ旧教徒(分離派)の悲劇を通して、ロシアの近代化・西欧化に対するムソルグスキーの懐疑が赤裸々に表現される。前奏曲「モスクワ河の夜明け」では、自然、国家、宗教それぞれの音楽的象徴(鳥の歌、軍隊ラッパ、教会の鐘)につづき、悲劇と動乱の予感に満ちた新時代の“夜明け”がじっくりと歌われる。
 
   作曲年代 1872年に開始、作曲家の死により未完に終わる。リムスキー=コルサコフによる補筆編曲は1882年に完成。
 初  演 [リムスキー=コルサコフ版]1886年2月9日(旧露暦)、サンクト・ペテルブルグにて、アマチュア劇団による。
 楽器編成
フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、ティンパニ、タムタム、ハープ、弦5部
 
 
 
ドミートリイ・ショスタコーヴィチ(1906-1975)
チェロ協奏曲 第1番 変ホ長調 作品107
 
 旧ソ連は名演奏家の宝庫であり、ピアノのギレリスやリヒテル、ヴァイオリンのオイストラフ、そしてチェロのロストロポーヴィチが、ショスタコーヴィチやプロコフィエフの新作を続々と初演していた。ショスタコーヴィチの2曲のチェロ協奏曲は、どちらもロストロポーヴィチの名人芸と音楽性を念頭においているが、第1番の方は、フルシチョフ時代の“雪どけ”の空気を反映してか、作曲者本来の諧謔さを取り戻している。
 
【第1楽章】作曲者が“ユーモラスな行進曲”と表現した楽章だが、冒頭、チェロ独奏が提示する第1主題は、映画音楽《若き親衛隊》(1948)のなかで「処刑場への行進」の場面から取られたもの。ホルンがもう一人の独奏者として活躍するのも印象的だ。
 
【第2楽章】サラバンド風の序奏につづき、ロシア民謡風の主題が歌われる。ニ長調に変わる中間部は和らいだ気分で始まるが、次第に緊張が高まり、劇的な序奏の再現を導く。
 
【第3楽章】前楽章から切れ目なくつづく148小節に及ぶ巨大なカデンツァであり、先立つ楽章の主要動機を展開しつつ、次の第4楽章につなぐ。
 
【第4楽章】全体は自由なロンド形式であり、ロンドやエピソード主題が8分の3拍子に変形して再現された後は、第1楽章第1主題が回帰して全体を締めくくる。スターリンが好んだといわれるジョージア(グルジア)民謡「スリコ」がグロテスクに変形され、独奏チェロや木管でロンド主題の合いの手のように奏されるのも、ショスタコーヴィチらしい悪戯(“ソソミファソ、ラファソ”の音型)。
 
   作曲年代 1959年7月~9月。ロストロポーヴィチに献呈。
 初  演
1959年10月4日、ムスティスラフ・ロストロポーヴィチの独奏、エフゲニ・ムラヴィンスキー指揮、レニングラード・フィルハーモニー交響楽団、旧レニングラードにて。
 楽器編成
独奏チェロ、フルート2(うち1名はピッコロ持ち替え)、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2(うち1名はコントラファゴット持ち替え)、ホルン、ティンパニ、チェレスタ、弦5部
 
 
 
ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(1840-1893)
交響曲 第5番 ホ短調 作品64
 
 興味深いことに、チャイコフスキーのいわゆる“3大交響曲”と“3大バレエ”は、それぞれペアを成すように同時期に作曲されている。それぞれ、交響曲第4番(1877)とバレエ《白鳥の湖》(1876)、第5番(1888)と《眠れる森の美女》(1889)、そして第6番《悲愴》(1893)と《くるみ割り人形》(1892)が並ぶ。このリストに、さらにオペラ《エフゲニ・オネーギン》(1878)、《スペードの女王》(1890)を加えると、各時期にチャイコフスキーを捉えていた大きな哲学的・芸術的な問題が浮かび上がってくる。自身の結婚問題を抱えていた30代のチャイコフスキーが、きわめてロマン的な愛と運命の相克に取り組んだとすれば、晩年の創作では、人生の終わりや超現実的世界との交流が中心的テーマとなっている。それでは交響曲第5番の場合はどうだろうか。
 当時の帝政ロシアでは革命派テロリストが暗躍し、暗殺された先帝の跡を継いだアレクサンドル三世は、国内の民主化運動を厳しく弾圧した半面、芸術文化を保護奨励し、ロシアの国際的イメージを高めることに意を尽くした。その立役者こそ、国際的に認められたロシア人作曲家チャイコフスキーである。悪の妖精の呪いで眠りに落ちたオーロラ姫が、王子のキスによって100年後に目覚める《眠れる森の美女》の物語は、ちょうどフランス革命から100年を経た当時の帝政ロシアへの壮大な賛美にほかならない。暗いホ短調で始まった交響曲第5番が、最後には力強いホ長調の行進曲で締めくくられるのも、同じく誠実な愛国心の表明と考えられるのである。
 全体は、冒頭クラリネットの低音によって提示される循環主題が、まるで運命に翻弄されるドラマの主人公のように、意匠を変えながら各楽章に現れることで、音楽的にも心理的にも一つの流れに統合されている。

 
【第1楽章】第1主題は循環主題の特徴(特にリズム)を受け継いでいるが、ニ長調の第2主題はチャイコフスキーらしい叙情的な旋律である。展開部では、6拍子の特徴を生かして2分割(3拍+3拍)と3分割(2拍+2拍+2拍)の二通りのリズムを対立させながら、激しいクライマックスを築き上げる。
 
【第2楽章】ホルン独奏を主役とするオペラの一場面のように叙情的な音楽が展開されるが(バレエ《眠れる森の美女》第2幕「ヴィジョン」に、良く似た主人公どうしのデュエットがある)、その情熱の迸りは、循環主題の出現によって突然中断される。
 
【第3楽章 “ワルツ”】歌謡的な前楽章に対して、こちらは舞踊性が中心だ。妖精や村人たちが舞い踊るバレエさながらに、多彩なリズムの絡み合いが小気味よい効果をあげるが、忘れていた循環主題が、最後に皮肉っぽく顔をだす。
 
【第4楽章 “フィナーレ”】堂々とした頌歌に転じた循環主題によって開始されるが、音楽は再び激しい動機展開の流れに呑み込まれ、オーケストラ全体の大きな問いかけと沈黙のあと、確信に満ちた輝かしい行進曲によって結ばれる。
 
   作曲年代 1888年5月~8月
 初  演
1888年11月5日(旧露暦)、作曲者自身の指揮、サンクト・ペテルブルクにて
 楽器編成
フルート3(うち1名はピッコロ持ち替え)、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、テューバ1、ティンパニ、弦5部
 
 
(C)千葉 潤(音楽学・ロシア音楽)(無断転載を禁じる)
 
山下一史写真:(C)ai ueda
横坂 源写真:(C)Takashi Okamoto
 
 
 
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