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2019年度 名曲コンサート 曲目解説

 
 
第107回名曲コンサート  8月31日(土)
外山 雄三

 
ラプソディー
 
2019年8月31日(土)
昼の部 13時30分/夜の部 17時00分 開演

 


フランツ・リスト(1811-1886)
ハンガリー狂詩曲 第2番 ハ短調
 
 狂詩曲(ラプソディ)は、複数の部分からなる自由な形式で書かれた音楽作品のこと。けれども、本日の演奏曲の大半がそうであるように、特定の地域の民謡や舞曲など、民族音楽的な要素を取り入れたものが多い。
 リストの場合、両親はドイツ系だが、生まれ育ったハンガリーの民族音楽を素材に狂詩曲を書いている。ピアニストとして名を馳せた彼は、まずはピアノ独奏用に19曲からなる「ハンガリー狂詩曲」を書いた。その後、第2番を含む6曲について、同郷の作曲家ドップラーと共に管弦楽用に編曲する。このうち第2番は、さらに幾人かの手によって管弦楽用編曲が行われるなど最も人気のある作品となった。本日演奏されるミュラー・ベルクハウスによる編曲版もその一つ。今日広く普及している版である。
 ドラマチックな序奏で幕を開ける。それに続いてハンガリー音楽の特徴を示すラッシャン(重く緩やかに演奏される部分)とフリシュカ(速いテンポで快活に演奏される部分)が続く。ラッシャンは序奏同様、弦楽器により重く切々と奏でられるが、のちにフリシュカで登場する軽やかな付点リズムの旋律が時折顔を覗かせる。その旋律をオーボエが奏で始めるとともにフリシュカに突入。その後は次第にテンポを上げながら激しさを増していき、一瞬静けさが戻るものの、再び熱狂に包まれ華やかに幕を下ろす。
 
●作曲年代 1847年(原曲)
●初  演
不詳
●楽器編成
フルート2(ピッコロ持ち替え)、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、ティンパニ、小太鼓、トライアングル、大太鼓、シンバル、ハープ、弦5部
 
 
アントニン・ドヴォルザーク(1841-1904)
スラヴ狂詩曲 第3番 変イ長調 作品45-3
 
 チェコの作曲家ドヴォルザークも、しばしば故郷スラヴの民族音楽を作品に取り入れた。その要素は交響曲や室内楽など彼の人気演目においても広く見いだせるが、なかでも「スラヴ舞曲」など民族の名を冠したものについては作品の骨格にこれを用いた。この「スラヴ狂詩曲」もその一つ。先の「スラヴ舞曲」とほぼ同時期に書かれたが、これらの曲は発表されるやいなや欧米各地で上演され、それまで無名に近かったドヴォルザークの名前はその音楽的特徴も相俟って「チェコの作曲家」として一気に知れ渡ることとなる。
 「スラヴ狂詩曲」は3曲からなるが、このうち本日演奏される第3番の人気がもっとも高い。美しいボヘミアの民謡を思わせるかのようなハープの調べが曲の始まりを告げる。この主題を様々な楽器が引き継ぎながら音楽は次第に高揚し、やがて全体が一つの舞踏の輪を形成する。その後もこの舞踏を交えながら冒頭主題が形を変えつつ何度も登場するが、踊りの輪が解けるかのように徐々に静けさが戻り始めると、やがて宴は終わりを迎える。
 
●作曲年代 1878年
●初  演
1879年9月24日。ヴィルヘルム・タウベルト指揮。ベルリンにて
●楽器編成 フルート2(うち1名はピッコロ持ち替え)、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、ティンパニ、大太鼓、シンバル、トライアングル、ハープ2、弦5部
 
 
セルゲイ・ラフマニノフ(1873-1943)
パガニーニの主題による狂詩曲 作品43
 
 本日の作品の中では唯一、特定の民族音楽を題材に用いていない狂詩曲。ロシアの作曲家でヴィルトゥオーソ・ピアニストとしても知られるラフマニノフが、やはり作曲家でヴァイオリンの名手でもあったパガニーニによる「24のカプリッチョ」の中の1曲を主題として、変奏形式の狂詩曲として書いたもの。ラフマニノフは数多くのピアノ作品を残しているが、本作品ではピアノと管弦楽のための協奏曲の形が取られていることも特徴的である。
 短い序奏に続き、パガニーニの主題が24の変奏によって奏される。主題の登場前にまずは第1変奏が現れるが、その後、ヴァイオリンによって奏でられる旋律が当の主題である。第2変奏ではピアノがその主題を引き継ぐが、第3変奏以降は主題の一部をなす16分音符の短いパッセージを様々に変形させながら曲を展開させていく。第7変奏になると、ファゴットとヴィオラが主題を奏でる一方で、ピアノがグレゴリオ聖歌の「ディエス・イレ(怒りの日)」の旋律を厳かに弾き始める。この旋律はその後も断片的な変奏も含めて登場するもので、第2主題と位置付けられる。一方、この作品を一躍有名にしたのが第18変奏。ピアノによる甘く叙情的な旋律で、映画などにもしばしば用いられるが、実は冒頭のパガニーニの主題の旋律線をほぼそのまま上下に反転させたものである。その後も華やかなピアノの妙技を見せながら変奏は続き、やがて「ディエス・イレ」の主題を管弦楽が高らかに歌い上げた後、ピアノが主題の断片を奏でて幕を閉じる。
 
●作曲年代 1934年
●初  演
1934年11月7日。レオポルド・ストコフスキー指揮。ピアノ独奏はラフマニノフ。ボルティモアにて
●楽器編成
独奏ピアノ、ピッコロ、フルート2、オーボエ2、イングリッシュ・ホルン、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、テューバ、ティンパニ、小太鼓、トライアングル、シンバル、大太鼓、
グロッケンシュピール、ハープ、弦5部
 
 
外山 雄三(1931-)
沖縄民謡によるラプソディー
 
 指揮者であると同時に作曲家として日本の楽界を牽引してきた外山雄三の場合、本公演のテーマとなる「ラプソディー」も、そこで核となる民俗音楽的素材もその創作活動の要と言える。代表作となる《管弦楽のためのラプソディー》では日本の様々な民謡や打楽器類を用いたが、その4年後に書かれた本作でも沖縄民謡を楽曲全体の柱とした。当時、外山はNHK交響楽団の海外演奏旅行に随行していたが、本作の場合はアメリカ軍の統治下にあった沖縄へ演奏旅行に行った際に書かれたという。
 沖縄民謡から取られた主題が、冒頭から低弦によってかすかに奏される。この主題が全曲を通じて形を変えつつ、様々な楽器によって受け継がれていく。中間部では全合奏により躍動的に演奏される場面もあるが、総じて少数の楽器により静かに主題が紡がれていくあたりは、まるで南国の穏やかな情景を幻のごとく映し出すかのようだ。末尾では「君が代」の調べもかすかに聞こえてくる。これらの旋律に託された作曲者の想いに耳を傾けても良いかもしれない。
 
●作曲年代 1964年
●初  演
1964年1月25日、NHKホール。『放送用録音』。外山雄三指揮、NHK交響楽団
●楽器編成
フルート3(うち1名はピッコロ持ち替え)、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット3、ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、テューバ、ティンパニ、大太鼓、合わせシンバル、吊りシンバル、小太鼓、締太鼓、ハープ、チェレスタ、弦5部
 
 
ジョルジェ・エネスク(1881-1955)
ルーマニア狂詩曲 第1番 イ長調 作品11
 
 ルーマニアに生まれ、ウィーンやパリで研鑽を積んだジョルジェ・エネスクは、まさに母国の民俗音楽から着想を得た作風でルーマニアの音楽文化を広く世界に知らしめた。本作でも、旋律やリズム、オーケストレーションなど、民俗舞踊を描写するかのような響きが数多く現れる。エネスクの作品の中でも演奏される機会が多い理由の一つも、随所に溢れる民族音楽的特質がドイツ音楽に慣れきった耳に新鮮味を与えるためであろう。
 クラリネットとオーボエの掛け合いによる始まりは、互いに踊りを促しているかのようだ。すぐに他の楽器もその輪に加わっていき、やがて全体で緩やかなステップを踏み始める。その後は様々な楽想が入れ替わるように登場するが、いずれも舞曲を彷彿とさせるもの。祭りの場で繰り広げられる輪舞が、大小さまざまに形を変えつつ延々と続いていくようである。
作曲年代
 
●作曲年代 1901年
●初  演
1903年3月。ジョルジェ・エネスク指揮。ブカレストにて
●楽器編成
フルート3(うち1名はピッコロ持ち替え)、オーボエ2、イングリッシュ・ホルン、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、コルネット2、トロンボーン3、テューバ、ティンパニ、トライアングル、小太鼓、シンバル、ハープ2、弦5部
 
 
エマニュエル・シャブリエ(1841-1894)
狂詩曲「スペイン」

 スペインを題材にしたこの作品は、シャブリエの代表作として広く知られるが、シャブリエ自身はフランスに生まれ、生涯を母国で過ごした作曲家である。音楽家として生きる決意を固めて役所を辞し、妻と出かけたスペイン旅行の直後に書かれた。リズムが特徴的な作品で、曲の冒頭で弦楽器が刻むピッツィカートは、3拍子で書かれているにも関わらず2拍子のように鳴り響く。だが、その直後には本来の3拍子のリズムも聞こえてくるなど、終始2つの拍子が入り混じるように現れる。こうしたリズムの変化に加え、華やかな音色や、陽気に表情を変えつつ繰り出される旋律線など、旅先で作曲家が目の当たりにした風土や音楽がインスピレーションを与えたのだろう。
 
●作曲年代 1883年
●初  演
1883年11月6日。シャルル・ラムルー指揮。パリにて
●楽器編成
ピッコロ、フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット4、ホルン4、トランペット2、コルネット2、トロンボーン3、テューバ、ティンパニ、トライアングル、タンブリン、大太鼓、シンバル、ハープ2、弦5部
 
 
(C)能登原 由美(音楽学・音楽評論)(無断転載を禁じる)
 
外山雄三写真 :(C)S.Yamamoto
 
 
                                     
 
 
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