大阪交響楽団 いずみホール定期演奏会 曲目解説

00693301
 
 
 
第26回 いずみホール定期演奏会 11月24日(木)
外山 雄三

2016年11月24日(木)
<昼の部>14時30分開演 <夜の部>19時00分開演
いずみホール
 

フランツ・フォン・スッペ(1819-1895)
喜歌劇「軽騎兵」序曲
喜歌劇「詩人と農夫」序曲


  ベルギー人の父と、作曲家ドニゼッティの親族に当るウィーン人の母親の間に生まれたフランツ・フォン・スッペ(1819~1895)は、官吏だった父の勧めで法学を学びましたが、父の死後、16歳の時にウィーンに出て本格的に作曲を学びます。1840年ウィーンのヨーゼフシュタット劇場に指揮者兼作曲家として採用され、以後50年間、ウィーンの各劇場や、チェコ、ハンガリーの劇場で指揮者や音楽監督を務めながら、劇場用の音楽を書き続けました。58年ウィーンに紹介されたオッフェンバックの作品の数々に魅せられて、ウィーン・オペレッタという新しいジャンルを創出し、次々にヒットを放ちました。オペレッタは、喜劇的要素の濃いオペラ・ブッファから派生したジャンルで、大衆的な喜歌劇・軽歌劇です。
  1866年に初演された「軽騎兵」は、ハンガリーを舞台に、愉快な軍隊生活を描いた喜歌劇です。スッペの作品中とくに有名な序曲は、金管のファンファーレに始まり、やがてそれは軽騎兵の爽快なギャロップへと発展してゆきます。中間部ではチェロによるエレジーが聴かれます。
  「詩人と農夫」は、スッペがオペレッタを手掛ける以前の1846年8月24日にウィーンで初演されたカール・エルマー作によるジングシュピール(ドイツ風歌芝居)のための付随音楽です。序曲は、劇中の6つの主要旋律を接続曲風にまとめています。
 
◆喜歌劇「軽騎兵」序曲
作曲年代  1866年
初  演
 1866年3月21日 ウィーンのカール劇場
楽器編成
 フルート、ピッコロ、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、
ティンパニ、打楽器、弦五部


◆喜歌劇「詩人と農夫」序曲
作曲年代  1846年
初  演
 1846年8月24日 ウィーン
楽器編成
 フルート2(ピッコロ持ち替え)、オーボエ2、クラリネット  2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、
トロンボーン3、テューバ、ティンパニ、打楽器、ハープ、弦五部


エドヴァルド・グリーグ(1843-1907)
「ペール・ギュント」第1組曲 作品46 より
“朝” “アニトラの踊り” “山の魔王の宮殿にて”


  ノルウェーの作曲家エドヴァルド・グリーグ(1843~1907)の残した作品のなかで、演奏会用の組曲「ペール・ギュント」は、とくに広く親しまれていますが、この作品はもともと、ノルウェーの詩人で劇作家イプセンが書いた劇詩「ペール・ギュント」のための劇付随音楽として書かれたものでした。1867年に出版された劇詩「ペール・ギュント」は、ノルウェーに古くから伝わるペール・ギュントという伝説的な人物を主人公としており、破天荒なペールの冒険の旅と、彼の20歳から老年までの長い時の流れを追って、その波乱に富んだ人生を描いています。因みに劇詩というのは、戯曲の形式で書かれた詩のことです。グリーグの音楽とともに舞台上演された劇詩「ペール・ギュント」は、大きな成功を収めました。この大成功を機にグリーグは全曲の中から、1888年に  “朝”、“オーゼの死”、“アニトラの踊り”、“山の魔王の宮殿にて”の4曲からなる第1組曲を、そして1891年に“イングリッドの嘆き”、“アラビアの踊り”、“ペール・ギュントの帰郷”、“ソルヴェイグの歌”の4曲からなる第2組曲を作りました。
  “朝”は、劇付随音楽の中で第4幕への前奏曲として演奏されます。ペール・ギュントがモロッコの海岸で迎える朝の情景を描いており、朝の爽やかな空気とやわらかい陽射しを感じさせる牧歌的な音楽です。
  “アニトラの踊り”は第1組曲の第3曲。預言者になりすましてアラビアにやってきたペールは、酋長の娘である美しいアニトラと出会います。妖艶に舞うアニトラの誘惑に、ペールは惹きこまれてゆきます。
  “山の魔王の宮殿にて”は、魔の山に入ったペールを、トロル(小鬼、妖精)の群れが包囲する場面の音楽で、不気味な雰囲気を醸し出しています。

 
作曲年代  1874年-1875年
初  演
 1876年2月24日 クリスティアニア(現オスロ)
楽器編成
 フルート2、ピッコロ、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、
テューバ、ティンパニ、大太鼓、シンバル、トライアングル、弦五部


ルロイ・アンダーソン(1908-1975)
フィドル・ファドル
ブルー・タンゴ
トランペット吹きの休日


  楽しい音楽を楽しく、美しい音楽をもっと美しくシンフォニックなスタイルで聴かせ、さらに、華麗なオーケストラの魅力を存分に発揮させて多彩な音楽を奏でた指揮者アーサー・フィードラーのもとには、優れた作・編曲家が集まってきました。なかでも親交の厚かった作・編曲家が、アメリカ・マサチューセッツ州生まれのルロイ・アンダーソン(1908~1975)です。アンダーソンは1929年ハーバード大学卒業後、母校で語学教師やスカンディナビア語の研究をしていましたが、学生時代にコントラバスや作曲を学んでいた彼は、1935年にプロの音楽家に転向し、作・編曲家、コントラバス奏者、指揮者として活躍します。作・編曲家としての才能をフィードラーに認められて以降は、フィードラーとボストン・ポップス管弦楽団のためにセミ・クラシックの楽しい小品を次々に発表していきます。
「フィドル・ファドル」は永久運動を描きだそうとしたもの。フィドルはヴァイオリンの一種で、ファドルは“ふざける”という意味です。「ブルー・タンゴ」は、物憂いブルースの旋律がタンゴのリズムに乗せて演奏されます。「トランペット吹きの休日」は、いつもオーケストラで難しい音楽を吹いているトランペット奏者たちが、きょうは休日なので、思い切りのびのびと自由に吹いている、といった感じの明るく爽快な曲調に彩られています。なお、原題にある「ビューグル」というのは、一般に軍隊の起床ラッパのような合図を吹き鳴らす管楽器の1種です。

◆フィドル・ファドル 
作曲年代  1947年
初  演
 1947年 アーサー・フィードラー指揮ボストン・ポップス管弦楽団、ボストン
楽器編成
 フルート2、ピッコロ、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、打楽器、弦五部

◆ブルー・タンゴ 
作曲年代  1951年
初  演
 1951年 アーサー・フィードラー指揮ボストン・ポップス管弦楽団、ボストン
楽器編成
 フルート2、ピッコロ、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、テューバ、打楽器、弦五部

◆トランペット吹きの休日 
作曲年代  1954年
初  演
 アーサー・フィードラー指揮ボストン・ポップス管弦楽団
楽器編成
 フルート2、ピッコロ、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン3、トランペット3、トロンボーン3、テューバ、打楽器、弦五部



ジャン・シベリウス(1865-1957)
交響詩「フィンランディア」 作品26


  フィンランドは1809年以降、帝政ロシアの支配下にあり、あらゆる面にわたって圧政に苦しめられていましたが、19世紀後半に欧州各地で高まり始めた民族意識や独立の気運は、やがてフィンランドにも及び、民族の伝統と誇りに根ざした愛国独立運動の催しも数多く行われるようになります。1899年11月3日、民族歴史劇「歴史的情景(いにしえからの情景)」がヘルシンキで上演されることになり、祖国愛にかられていたジャン・シベリウス(1865~1957)は、中世からのフィンランドの歩みを示すこの民族歴史劇のために劇付随音楽を作曲しました。この付随音楽の最後の部分に改訂の手を加え、演奏会用の管弦楽曲としてまとめたのが壮大な交響詩「フィンランディア」です。その当時は「スオミ(湖と沼の国)」と題されていました。美しい自然に囲まれた祖国への讃歌であり、民族の独立を願う思いを描いたこの作品は、フィンランド国民の愛国心を鼓舞するものとして、初演後に、ロシア政府によって演奏禁止令が発動されたり、曲名の変更が求められたりしました。因みにフィンランドが独立するのは、帝政ロシアに革命がおこり、ソ連邦が誕生した1917年のことです。
  曲は、ロシアの圧政に苦しむフィンランドの人々の重苦しい心を感じさせる導入部に始まります。苦難に立ち向かうかのような闘争的な部分を経て、民謡風の讃歌が呈示され、最後に力強い楽想がクライマックスを作りあげ、自由と独立を望む人々の希望を高らかに響かせて締め括られます。中間部の美しい旋律には、1938年頃になってV.A.コスケンニエミによる愛国の歌詞が付けられ、「フィンランディア讃歌」作品26-7という合唱曲になりました。

作曲年代  1899(1900年改訂)年
初  演
 1899年11月3日 ヘルシンキ(交響詩としての初演は1900年7月2日、ロベルト・カヤヌス指揮 ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団、パリにて。)
楽器編成
 フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、テューバ、
ティンパニ、トライアングル、シンバル、大太鼓、弦五部

 
ジョルジュ・ビゼー(1838-1875)
「カルメン」第1組曲

  ジョルジュ・ビゼー(1838~1875)の代表作にして遺作となった歌劇「カルメン」は、メリメの同名の小説をもとにした名作で、1820年頃のスペインのセビリアとその近郊を舞台に、妖艶なロマ(ジプシー)の女カルメンの悲劇を描いた作品です。ところがビゼーは、1875年パリのオペラ・コミック座での初演からわずか3ヶ月後に世を去ってしまったため、この作品の世界的な成功も知らず、演奏会用の組曲を編むこともできませんでした。今日、一般的に「カルメン」組曲として親しまれているのは、ビゼーの友人で作曲家のエルネスト・ギローが全曲から名曲を選んで編曲して配列したものや、ギローの補作版をもとに音楽学者のフリッツ・ホフマンが編んだものなどがあり、第1組曲と第2組曲があります。ただ、ビゼー自身が選曲して編んだ組曲ではないので、指揮者によっては演奏する曲順を変えたり、第1と第2組曲をひとつの組曲として演奏したり、あるいは全曲から適宜選びだしてオリジナルの組曲版を編むなど各種の版が演奏されています。
  一般的に第1組曲は、以下のように歌劇の中の前奏曲と間奏曲で構成されています。
  「前奏曲」:第1幕への前奏曲の後半部分の、カルメンとホセの悲劇を暗示する音楽が演奏されます。
  「アラゴネーズ」:第3幕と第4幕の間奏曲。スペインのアラゴン地方の舞曲が使われています。
  「間奏曲」:第3幕への前奏曲です。ハープの伴奏に乗ってフルートが流麗な旋律を奏でます。
  「セギディーリャ」:第1幕でカルメンがホセを誘惑する場面の音楽です。
  「アルカラの竜騎兵」:第2幕の幕開きに演奏されます。
  「トレアドール(闘牛士)」:第2幕、闘牛士エスカミーリョが登場して歌うバリトンのアリアの音楽ですが、第1幕への前奏曲の前半部分でも演奏されます。

作曲年代  1875年
初  演
 (歌劇は1873~4年作曲、1875年3月3日初演、パリのオペラ・コミック座にて。)
楽器編成
ルート2(ピッコロ持ち替え)、オーボエ2(イングリッシュ・ホルン持ち替え)、クラリネット2、
ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、ティンパニ、小太鼓、大太鼓、カスタネット、
タンブリン、トライアングル、シンバル、ハープ、弦五部


ベドルジフ・スメタナ(1824-1884)
交響詩「わが祖国」より “モルダウ”


  ベドルジフ・スメタナ(1824~1884)は、チェコ国民音楽の創造に力を注ぎ、国民歌劇の作曲に取り組むとともに、プラハの国民歌劇場の創設を推進し、チェコ国民楽派の祖を築きあげました。“チェコ近代音楽の父”と称えられるスメタナの祖国愛がもっともよくあらわれた、6曲からなる連作交響詩「わが祖国」は、1874年から約6年がかりで書かれた超大作です。6曲にはいずれもスメタナ自身による標題が付けられています。全曲通しての初演は1882年11月5日にプ
ラハで行なわれました。そして作品は、このプラハに献呈されました。1946年以来、毎年5月に開催されている「プラハの春」国際音楽祭のオープニング・コンサートでは必ず演奏されています。
  その連作の第2曲「モルダウ」は、全曲中もっとも名高い曲で、1874年に書かれました。モルダウ(ヴルタヴァ)は河の名前です。南ボヘミアの森に生まれたふたつの小さな源流がいつしか合流し、次第に川幅を広げていきます。途中の河岸での狩や祭りの賑わい、農民たちが舞曲を踊る姿や、夜の川面に水の精た
ちが舞う夢幻的な様子などを映しだしつつ、壮大な流れはプラハ市内を貫流し、古城ヴィシェフラドに敬意を表しながらゆったりと流れ、やがてエルベ河に合流してかなたへと流れ去ってゆきます。多くの伝説とロマンを秘めたモルダウ河の流れを鮮やかに描写し、その流れに託して祖国の美しい自然をうたいあげたこの曲は、古今の交響詩を代表する傑作です。

作曲年代  1874年
初  演
1875年4月4日 プラハ
楽器編成
 フルート2、ピッコロ、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、
テューバ、ティンパニ、トライアングル、大太鼓、シンバル、ハープ、弦五部


外山 雄三(1931-)
管弦楽のためのラプソディー


  現在、大阪交響楽団のミュージック・アドバイザー、NHK交響楽団の正指揮者を務める外山雄三(1931~)氏によって作曲された日本を代表する管弦楽曲の1曲です。1960年秋にNHK交響楽団が日本のオーケストラとして初の海外公演を行うにあたり、アンコール・ピースとして演奏するために作曲された作品で、その海外公演に先立ち、同年7月に岩城宏之指揮のNHK交響楽団により東京都体育館で初演されました。その後2001年3月に改訂されています。
  曲は、誰もがどこかで聴いたことのある日本の民謡の数々が素材になっており、華麗な色彩にあふれたオーケストラの響きを十分に発揮させる楽器編成に加え、拍子木やチャンチキ、うちわ太鼓、締太鼓など日本の伝統楽器が数多く用いられます。曲名にある「ラプソディー」(狂詩曲)という語が示しているように、形式にとらわれない自由闊達な表現により、全体が切れ目なく演奏される3つの部分とコーダで構成されています。拍子木の連打に和太鼓の連打が加わる導入部の後、熊本の「あんたがたどこさ」、北海道日本海沿岸の民謡「ソーラン節」、福岡の「炭鉱節」、和歌山の「串本節」の旋律が次々と現れます。次いでフルートで信州の「信濃追分」の旋律が奏でられた後、鈴の音が響き、拍子木の連打と和太鼓の連打に続いて関東の「八木節」で熱狂的に盛り上がる魅力尽きない作品です。

作曲年代  1960年
初  演
 1960年7月 岩城宏之指揮NHK交響楽団、東京都体育館にて
楽器編成
 フルート2、ピッコロ、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、
テューバ、ティンパニ、拍子木、うちわ太鼓、締太鼓、大太鼓、ウッドブロック、ボンゴ、鈴、チャンチキ、
キン(小型筝)、ハープ、弦五部
 
     
        (C)横掘 朱美(音楽評論家)(無断転載を禁じる)

      
 
 

 
 
 
 
 
                                     
 
 
一般社団法人大阪交響楽団
Osaka Symphony Orchestra
〒590-0074
大阪府堺市堺区
北花田口町3-1-15 東洋ビル4F
TEL:072-226-5533
FAX:072-226-5544
 
 
四国支局
〒790-0051
愛媛県松山市生石町
649-11-402
TEL:089-947-4751
FAX:089-934-3577
 
 
201309301658395847.jpg
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
<<一般社団法人大阪交響楽団>> 〒590-0074 大阪府堺市堺区北花田口町3-1-15 東洋ビル4F TEL:072-226-5533 FAX:072-226-5544