大阪交響楽団40年の軌跡メモリアルシリーズ
2020年12月16日(水)19時00分開演
大阪交響楽団との最初の関わりはかれこれもう20年前になるのですね。月日が経つのは早いものです。ひょんなことで敷島鐵雄さん(現 大阪交響楽団相談役)にご縁が出来、生まれた土地の大阪で過ごした3年間は思い出深いものでした。みなさんとルーマニアに行ったこと、ルーマニア国立放送交響楽団と合同演奏したことなど、つい昨日のことのように思い出されます。
今回のプログラムは、リストとフランクの2曲がベートーヴェンの最後の作品、弦楽四重奏曲第16番から採られた主題を使っていて、さらに三重協奏曲とも主題が酷似していること、そしてベートーヴェン生誕250周年のアニバーサリーイヤーの最後に「ベートーヴェンから巣立ってゆくもの」というつもりで組んだプログラムでした。そのときは2020年がこのようなコロナ禍に見舞われるとも思わず、散々ベートーヴェンが演奏された年の最後に、三人の素晴らしい若いソリストがなかなか演奏されない三重協奏曲で華を添え、そしてリストとフランクで未来へつなぐ、、、、、はずでした。
今この原稿を書いているのは10月の後半ですが、ヨーロッパやアメリカではまた感染者が増え、私自身本当は今頃ヨーロッパで行っているはずだったコンサートも中止になってしまいました。
先月7ヶ月ぶりに観客を前に指揮棒を振りあらためて思ったのは、音楽は生のコミュニケーションであるということ。新しい生活様式だとか、リモートだとか配信の前に、人と人が出会い、コミュニケーションをすることで新しいアイディアが生まれ、文化に華を咲かせてきたという思いです。またそれは演奏する側から聴く側への単なる一方通行ではありません。人と人が出会い過去の叡智がたくさんつまった巨匠の音楽の下、思いを新たにして音楽に生命を吹き込む。オーケストラは人間の歴史が創り上げた、もっとも人間らしい行いの究極の形のひとつと思うのです。言葉で伝わらない何かがあるから、人間は音楽を育んできたのでしょう。
再会もきっとまた新しいエピソードを育むのでしょう。ひさしぶりに皆さんにお会いできること、いまから楽しみにワクワクしています。
曽我大介(大阪交響楽団 第3代音楽監督・常任指揮者)