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2020年度 名曲コンサート 曲目解説

 
 
第113回名曲コンサート   9月26日(土)
太田 弦
岡田 将

 
ベートーヴェン~サン=サーンス
 
2020年9月26日(土)
昼の部 13時30分/夜の部 17時00分 開演
 
※ゲルマン・キトキン氏は、新型コロナウイルスの影響による、
ロシアから日本への渡航制限のため来日および出演ができなくなりました。
代わって岡田 将(おかだ まさる)氏が出演いたします。
なお、曲目等に変更はございません。
 
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)
歌劇「フィデリオ」序曲 作品72c
 
19世紀のヨーロッパにおいては、一流の作曲家の条件とはすなわちオペラを成功させることであり、ルートヴィヒ・ファン・ベートーヴェン(1770-1827)といえども、ケルビーニやロッシーニといったオペラ作家に比べればその知名度は低かった。
もちろん、ベートーヴェンもその生涯に何度もオペラを計画はしてはいたが、結局、完成したのは「フィデリオ」1曲。しかしその分、彼はこのオペラに全力を尽くし、神経質なことに、初演間近になってから序曲をまるごと書き換えてしまうほどの意気込みを見せた。
しかし1805年の初演は大失敗に終わる。翌1806年の再演の際には、さらに序曲をあらたに書き直して挑んだものの、やはり不評。かくしてこのオペラは永久にお蔵入りかと思われたが、8年後の1814年、彼を尊敬する人々によって、再再演の話が持ち上がる。申し出に感激したベートーヴェンは、またもや(!)新しい序曲を作曲してこれに応え、三度目の正直にして、見事に大成功をおさめたのだった。
さて、というわけで、このオペラには都合4種類の序曲が残されることになった。本日演奏されるのは、このうち最後のもの。それまでの3曲が、オペラの旋律の抜粋などを含む複合的な構成だったのに対して、この決定版でベートーヴェンがたどり着いたのは、むしろシンプルで暗示的な、小さな交響詩といってもよいような音楽だ。
曲は、冒頭でファンファーレのように湧き上がってくる闊達な音型、その直後にあらわれるホルンとクラリネットのゆったりとしたハーモニーという二つの要素で始まる。まずはオーケストラの能力が試される、ワクワクする瞬間だ。その後は、いずれも明快な音楽要素が次々に入れ替わり、最後の豪快なコーダになだれ込んでゆく。途中であらわれるホルン独奏(スコアでは2番奏者の担当)にも注目したい。
 
作曲年代 1814年
初  演 1814年5月23日、作曲者指揮、ウィーン・ケルントナトーア劇場。
楽器編成 フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン2、ティンパニ、弦5部
 
 
 
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)
ピアノ協奏曲 第3番 ハ短調 作品37
 
「フィデリオ」をベートーヴェンに依頼したブラウン男爵は、モーツァルトと共に「魔笛」を作り上げたシカネーダーから、アン・デア・ウィーン劇場の経営権を買い取った人物である。
もともとシカネーダーは「フィデリオ」よりもはるかに以前から、ベートーヴェンに新作オペラを依頼しており、作曲に集中させるためにアン・デア・ウィーン劇場の一室にベートーヴェンと彼の弟を住まわせていた。しかし、ほどなくして劇場が買収されてしまったために、シカネーダーは自分の劇場でベートーヴェンのオペラを世に出すチャンスを失ってしまったわけである。もしも計画がうまく行っていれば、シカネーダーは2大巨匠のオペラ創作にかかわった人物として、音楽史の中ではるかに大きな扱いを受けていたことだろう。
とはいえ、シカネーダー時代のこの劇場で、ベートーヴェンは重要な演奏会を行なっている。1803年、劇場に住みはじめて間もない頃に、彼は「交響曲第2番」「オリーブ山上のキリスト」「ピアノ協奏曲第3番」という大作3つの初演を同日に行なっているのである。この日は他に「交響曲第1番」の再演もあったというから、かなり盛りだくさんのプログラムだ。
初演で独奏を務めたのは、もちろん作曲者自身。彼は自室から階下の劇場に降りて演奏会をこなし、ふたたびまた階段を上って自室に戻ったのだろう(そんな姿を想像すると、なんだか面白いではないか)。ちなみにこの時には独奏パートの記譜が間に合わず、ベートーヴェンは半ば即興的にピアノを弾いたという、なにやら「勧進帳」を思わせるエピソードも残っている。
第1楽章は、ハ短調の決然たる主題といい、そして練習曲のような上行音階で入ってくるピアノといい、交響曲の冒頭楽章を思わせる重厚な音楽。第2楽章は、ベートーヴェンの協奏曲における緩徐楽章の中でももっとも美しい一幕だろう。「ホ長調」という、冒頭楽章からは遠く離れた調で開始されるが、その分、最初に音が鳴った時の新鮮さは格別だ。そして第3楽章は、ハ短調の不安定な旋律が、時に長調に転じ、時には流麗なロマン派風の性格を見せながら進んでゆく。これぞロンドと言いたくなるような、素晴らしいバランスの音楽だが、終結部に待ち構えるピアノの華麗な技巧にも注目したい。
 
作曲年代 1803年
初  演 1803年4月5日、作曲者自身の独奏、アン・デア・ウィーン劇場。
楽器編成 独奏ピアノ、フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2、トランペット2、ティンパニ、弦5部
 
 
カミーユ・サン=サーンス(1835-1921)
交響曲 第3番 ハ短調 作品78 「オルガン付き」
 
カミーユ・サン=サーンス(1835-1921)は、日本においてはその能力が十分に評価されていない作曲家ではなかろうか。
10歳でピアニストとしてデビューを飾った時には、すでにベートーヴェンのほとんどのピアノ・ソナタを暗譜で弾きこなし、サラサーテと出会ったことをきっかけにして、ヴァイオリンの技巧を駆使した「序奏とロンド・カプリチオーソ」をさらっと(?)書いてしまい、さらに普仏戦争の後には「国民音楽協会」を設立してフランス音楽界の再興に尽力したかと思えば、70歳を過ぎてから、当時の新しいメディア「映画」のためにいち早くオリジナル曲を書いた…と、その軌跡は爽快な天才ストーリーなのだが、逆に器用貧乏に捉えられてしまうのかもしれない。大体、日本においては、ドイツのむっつりと重厚な音楽が好まれるのだ。
しかし、この「交響曲第3番」を聴けば分かるように、残された作品はどれも独創的だ。無駄のないオーケストラ・スコアは、全ての楽器が鳴るべくして鳴り、美しいバランスを保つ。また、オルガンやピアノの用法も小憎らしいほどに効果的。どこをとっても魅力的なのである(ちなみに、同じく1886年に、全く趣向の異なる冗談音楽「動物の謝肉祭」を書いているのも、天才ならではの幅の広さといえよう)。
全体は2つの楽章からなるが、しかしそれぞれは中央で二つに分かれており、基本的なフォルムは4楽章構成と変わらない。つまり作曲者はできるかぎり全体をシームレスに繋げたかったのだろう。
「第1楽章前半」は、細かい音符の動きが積み重なって、徐々に大きな伽藍を形成してゆく過程。初めてお聴きになる方は、ティンパニに注目すると曲の進行が分かりやすいと思う。しばしの休符を挟んであらわれるのが、緩徐楽章の役割を果たす「第1楽章後半」。オルガンの響きの中で、弦楽器がたゆたうように泳いで始まるという素晴らしいアイディアに加えて、途中の転調も斬新だ。
「第2楽章前半」はスケルツォ。弦楽器の切羽詰まった同音反復で始まるが、やがて大活躍をみせるピアノが全く異なった風を運んでくる。そして、突然にオルガンがフォルテで和音を響かせると、いよいよ「第2楽章後半」の始まり。ヘンデルのオラトリオのように輝かしく、ジョン・ウィリアムスのようにドラマティック、しかもフーガ的な技法の妙味や、オーケストラの各楽器の音色も存分に味わえる。こんな贅沢な音楽もちょっと他にない。

 
作曲年代 1886年
初  演 1886年5月19日、作曲者自身の指揮、ロンドン、セント・ジェイムズ・ホール。
楽器編成 フルート3(うち1名はピッコロ持ち替え)、オーボエ2、イングリッシュホルン、クラリネット2、バスクラリネット、ファゴット2、コントラファゴット、ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、テューバ、ティンパニ、オルガン、ピアノ(2名)、トライアングル、シンバル、大太鼓、弦5部
 
 
C) 沼野雄司(音楽学)(無断転載を禁ずる)
 
太田 弦写真:(C) ai ueda
岡田 将写真: Photo Yoshiko Muneishi 
 

 

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