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2020年度 名曲コンサート 曲目解説

 
 
第111回名曲コンサート 2021年3月10日(水)に延期
オーラ・ルードナー

 
モーツァルト~ベートーヴェン~ブラームス
 
 
2020年5月9日(土)2021年3月10日(水)に延期
昼の部 13時30分/夜の部 17時00分 開演

 

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)
劇付随音楽「エグモント」 作品84 序曲
 
 「エグモント」はドイツの文豪ゲーテの戯曲である。1809年、ウィーンの宮廷劇場支配人ヨーゼフ・ハルトルはこの戯曲の劇上演のためにルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)に音楽を依頼した。ゲーテを崇敬していたベートーヴェンはこの仕事に熱心に取り組み、序曲と劇中の音楽9曲を作曲した。
 物語は、16世紀のフランドルの領主エグモント伯を題材としている。彼は祖国をスペインの圧政から救うべく独立運動を指導していたが、捕えられてしまう。エグモント伯を救おうとした恋人クレールヒェンも力及ばず自殺してしまうが、彼女は死刑宣告を受けたエグモントの前に幻影として現れて、彼を祝福する。
 作曲は1809年秋から翌年にかけて進められたが、1810年5月の上演初日にまでには完成できず、ようやく6月15日の上演時から音楽付きで上演された。今日では劇中の音楽が演奏される機会は稀だが、序曲だけは劇全体の流れと悲劇性を凝縮した傑作ゆえ、本日のように演奏会で単独で取り上げられて広く親しまれている。
 曲はヘ短調。重々しい序奏の後、ソナタ形式による闘争的な主部が劇的に発展、最後は処刑されたエグモントと死を通して彼の魂を救済したクレールヒェンを讃える輝かしい勝利のコーダで閉じられる。
 
  作曲年代 1809-10年
  初  演 1810年6月15日。指揮は不詳(作曲者自身?)。ウィーンにて。
  楽器編成
フルート2(うち1名はピッコロ持ち替え)、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、ティンパニ、弦5部
 
 
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)
交響曲 第25番 ト短調 K.183
 
 ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-91)は8歳の時に初めて交響曲(第1番変ホ長調K.16)を手掛けて以来、当時発展途上だった交響曲というジャンルの可能性を様々な角度から追求していった。そして17歳の1773年10月にザルツブルクで書いた本日のこのト短調交響曲で、それまでの彼の交響曲には見られなかった新しい作風を打ち出す。すなわち暗い短調による感情表現の試みである。
 こうした試みは作曲の直前の7月から9月にかけてのウィーン旅行と関わるものであることは間違いない。すなわちウィーンで知ったヨーゼフ・ハイドンやヨハン・ヴァンハルらの短調の交響曲が刺激になったと考えられるのだ。また最近の研究ではフローリアン・レオポルト・ガスマンの短調の弦楽四重奏曲の影響だとする見解も出されている。いずれにせよ激情を劇的に表出したこの交響曲は、モーツァルトの全交響曲の中でも異色のもので、やはりト短調をとる後期のあの有名な第40番K.550(1788年)が円熟した書法のうちに悲劇的表現を示しているのに対し、第25番は若々しい感情をストレートに打ち出しているといえよう。ホルンを当時の標準の2本でなく4本用いている点にも激しい表現を意図していることが窺える。

 
第1楽章 アレグロ・コン・ブリオ、ト短調。シンコペーションの情熱的な第1主題で始まる劇的な楽章。
 
第2楽章 アンダンテ、変ホ長調。静かな叙情を湛えた緩徐楽章。
 
第3楽章 メヌエット、ト短調。暗い短調のメヌエット。管楽のみの明澄なトリオが対照される。
 
第4楽章 アレグロ、ト短調。再び劇的な情熱で運ばれるソナタ形式のフィナーレ。
 
  作曲年代 1773年
  初  演
不詳
  楽器編成
オーボエ2、ファゴット2、ホルン4、弦5部
 
 
ヨハネス・ブラームス(1833-1897)
交響曲 第4番 ホ短調 作品98
 
 ヨハネス・ブラームス(1833-97)は毎夏避暑地に赴いて集中的に作曲に取り組むことを常としていた。実際彼の主だった作品の多くは避暑地で書かれている。後期の傑作である交響曲第4番も1884年と1885年のふた夏かけてウィーン南西の避暑地ミュルツツーシュラークで作曲が進められた。ブラームスはこの避暑地に住んでいた知人フェリンガー夫妻の世話になりながらこの交響曲に取り組み、1884年の夏に第1、2楽章を、翌年夏に第3、4楽章を作り上げている。
 ワーグナーやリストなどいわゆる新ドイツ派の革新的なロマン主義が大きな潮流となっていた当時にあって、ブラームスが保守的な古典主義者と見做されたことはよく知られているが、その彼の作品の中でもこの交響曲第4番はとりわけ古風な趣を感じさせる点が多い。そのことは特に、第2楽章のフリギア旋法(古い教会旋法のひとつ)による主題や、第4楽章でのヨハン・セバスティアン・バッハの主題によるパッサカリアの採用などに示されている。パッサカリアは変奏手法によるバロック時代の舞曲で、ブラームスはこの古い舞曲のスタイルを敢えて交響曲の終楽章に導入したのだった。古典派的な交響曲様式の中に教会旋法やバロック時代の技法を巧みに取り入れたこの交響曲は、形式構成や技法の点で彼の伝統志向を端的に現している。
 ただ留意したいのは、そのような古い手法が19世紀に相応しいロマン的な感情表現と結び付けられている点だ。第2楽章の旋法主題は人生の秋を思わせる孤独な心情のロマン的表現として用いられているし、終楽章のパッサカリアにおけるバッハの主題(カンタータBWV150の中の主題)にしても、その呈示からしてきわめてロマン的な和声付けがなされ、以後の変奏を通してそうした色付けが様々に施されていく。ブラームスの作品はどれも古典的形式や伝統的な様式のうちにロマン的な精神が息づいているが、とりわけこの交響曲ではバロック的な手法や形式といった古めかしい書法を意図的に取り入れることで、後期の彼ならではの物寂しい情感のロマン的表現が引き立たされている。この作品にみられる古典やバロックへの志向は決して懐古趣味のようなものではなく、ロマン派に相応しい感情表出と結び付いたものなのである。

 
第1楽章 アレグロ・ノン・トロッポ、ホ短調。冒頭の切々たる第1主題は3度音程(およびそれを裏返した6度音程)の連鎖でできているが、この3度(6度)関係は全曲通しての重要な要素となる。多彩な楽想を緊密に纏めつつ、情感に満ちた発展を繰り広げるソナタ形式楽章である。
 
第2楽章 アンダンテ・モデラート、ホ長調。ホルンによるフリギア旋法の序奏で開始され、これが第1主題に受け継がれる。孤独な心境を映し出したような楽章で、第2主題はチェロが叙情たっぷりに歌う。展開部のないソナタ形式だが、再現部の第1主題再現の後に展開的部分が置かれる。
 
第3楽章 アレグロ・ジョコーソ、ハ長調。スケルツォに相当する楽章だが、ソナタ形式をとる。粗野な主題や哄笑するような楽想、華やかなトライアングルの用法など、他の3つの楽章の渋い色調と際立った対照をなす諧謔的な性格はブラームスの全作品の中でもかなり異色である。
 
第4楽章 アレグロ・エネルジコ・エ・パッシオナート、ホ短調。バッハのカンタータBWV150の終曲の主題(少し形を変えて用いている)によるパッサカリア形式のフィナーレ。冒頭に管楽器で8小節の主題が吹かれた後、30の多様な変奏が巧みな配列のもとで展開され、最後は主題に基づくコーダが大きな盛り上がりを築く。
 
   作曲年代 1884-85年
   初  演
1885年10月25日。指揮はブラームス自身。マイニンゲンにて。
   楽器編成
フルート2(うち1名はピッコロ持ち替え)、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、コントラファゴット、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、ティンパニ、トライアングル、弦5部
 
(C)寺西 基之(音楽評論家)(無断転載を禁じる)
 
 
 
 
                                 
 
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