01199410
 
 
 
第242回 定期演奏会   8月28日(金)
太田弦(正指揮者)(C)ai ueda
木澤 佐江子

 
2020年8月28日(金)19時00分開演 
 
出演を予定しておりました指揮者 ガブリエル・フェルツ氏は、新型コロナウイルスの影響により、日本への入国規制のため出演できなくなりました。
代わって、太田 弦(大阪交響楽団 正指揮者)が出演いたします。曲目等に変更はございません。
 
ガブリエル・フェルツ氏の出演を楽しみにしていらっしゃいましたお客様には心よりお詫び申し上げますとともに、太田 弦と大阪交響楽団の演奏をお楽しみいただきますようお願い申し上げます。
 

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)
「献堂式」序曲 作品124
 
 1824年までに『ミサ・ソレムニス』『交響曲第9番』という大作を発表し終えた最晩年のルートヴィヒ・ファン・ベートーヴェン(1770-1827)にとって、その最後のパトロン(経済的支援者)となったのは、ロシア、サンクト・ペテルブルクのニコライ・ガリツィン侯爵であった。ガリツィンからはそれ以前、1822年11月に「1、2、ないしは3曲の弦楽四重奏曲」の委嘱を受けている。当分の間は大作に忙殺されざるを得ない事情の中、ベートーヴェンはこの新しい顧客の依頼に応えるため(そして自身の経済状況の改善のため)、さしあたってすぐに送ることのできる作品を見繕う必要に迫られた。
 折しも、ウィーンのヨーゼフシュタット劇場の落成式を祝う劇作品として、2作の新作劇を委嘱されたカール・マイスルは、そのうちの一作をかつてコッツェブー作、ベートーヴェン音楽による『アテネの廃墟』から『献堂式』へと改作することで間に合わせることに決め、音楽も一部を作曲・一部を流用することになった。
 短期間で作曲されたこともあり、作品全体を貫く推敲の跡はあまり見られないものの、『交響曲第9番』第4楽章において宇宙の広がりと博愛を説く後半部で印象的(宗教的)に用いられたトロンボーンが、同じような威厳を描くために、序曲の冒頭でのみ用いられているのが目を惹く。同様に、『第九』で用いられた、歓喜の歌と博愛の主題による二重フーガの手法は、そのまま本作の最後でも用いられており、ベートーヴェンが生前に手がけた最後の管弦楽曲として、いまなお独自の立ち位置を占めている。
 
●作曲年代 1822年
●初  演
1822年10月3日。フランツ・グレーザー指揮。ウィーン・ヨーゼフシュタット劇場にて。
●楽器編成
フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、ティンパニ、弦5部
 
 
リヒャルト・シュトラウス(1864-1949)
オ-ケストラ伴奏付き歌曲より
「献呈」 作品10-1、 「冬の霊感」 作品48-4、「万霊節」 作品10-8
「あした」 作品27-4、「ツェツィ-リエ」 作品27-2
 
 リヒャルト・シュトラウス(1864-1949)がその前半生を生きた19世紀後半、ドイツ歌曲はすでにシューベルト以来の確固たるひとつのジャンルとして、ただの「歌(リート)」を超えた「芸術歌曲」としての様相を強く帯びていた。シュトラウスの場合、歌曲の制作時期は青年~壮年期に偏っており、その多くは1880~90年代にマイニンゲン、ヴァイマールなど、小さいながらも責任ある立場において指揮活動を経験しつつ、次世代の扉を切り拓くような交響詩などの大作に取り組み、その名声を高めた時期と重なっている。その多くは、後に妻となったソプラノ歌手パウリーネ・デ・アーナの歌唱(と自らのピアノ伴奏)を念頭に置いて作曲された。
 シュトラウスが付曲する詩を選ぶ際の規準には、詩そのものの完成度や内容を重視するよりは、むしろ平凡な、何気ない情景を描いただけのような、とりとめのない詩を敢えて選びとることを好んだように見える。その意味では、創作態度はシューベルトに近いとも言える。どのような言葉からも、躍動的、ドラマ的、そしてときには官能的な音楽をつけることで、詩の世界に新たな生命を与えることができる、という作曲家の自負の思いすら伝わってくる。
 240曲を超える歌曲のうち、「名曲」として歌曲のリサイタルで頻繁にとりあげられるのは30~50曲か。「献呈」「万霊節」などを含む『8つの歌曲』作品10(1885)、「あした」「ツェツィーリエ」などを含む『4つの歌曲』作品27(1894)は、そのなかでも極めつけの名曲だろう。これらの詩に対して(非常に雑駁な括りではあるが)、シュトラウスは各節にまったく同じ旋律をあてる有節歌曲形式を採ることはないが、詩の内容を(ライトモティーフに近い手法で)直接音楽でも表現する完全な通作歌曲形式を用いることも少なく、その折衷型が多い。作品10-8「万霊節」では、第1節と第3節の旋律はかなり共通し、第2節でより複雑な様相を呈している。これなどは、ABAの三部形式、もしくは提示部・展開部・再現部を有するソナタ形式を歌曲に援用した結果と考えてもよいだろう。
 
「献呈」 作品10-1
●作曲年代 1885年、オーケストラ編曲:1940年 (編曲:ロベルト・ヘーガー)
●初  演
不明
●楽器編成
独唱ソプラノ、フルート2、オーボエ2、クラリネット2、バスクラリネット1、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン1、ティンパニ、ハープ1、弦5部
 
「冬の霊感」 作品48-4
●作曲年代 1900年、オーケストラ編曲:1918年 (編曲:作曲者)
●初  演
不明
●楽器編成
独唱ソプラノ、オーボエ1、クラリネット2、ファゴット2、ホルン3、弦5部
 
「万霊節」 作品10-8
●作曲年代 1885年、オーケストラ編曲:1932年 (編曲:ロベルト・ヘーガー)
●初  演
不明
●楽器編成
独唱ソプラノ、フルート2、オーボエ2、クラリネット2、バスクラリネット1、ファゴット2、ホルン4,トランペット2、トロンボーン1、ティンパニ、ハープ1、弦5部
 
「あした」 作品27-4、「ツェツィ-リエ」 作品27-2
●作曲年代 1894年、オーケストラ編曲:1897年 (編曲者:作曲者)
●初  演
1897年11月21日。独唱:パウリーネ・シュトラウス、指揮:リヒャルト・シュトラウス。ブリュッセルにて。
●楽器編成
作品27-2 :独唱ソプラノ、フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、テューバ1、ティンパニ、ハープ1、弦5部
作品27-4 :独唱ソプラノ、ホルン3、ハープ1、独奏ヴァイオリン、弦5部
 
 
 
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)
交響曲 第3番 変ホ長調 作品55 「英雄」
 
 若き日のルートヴィヒ・ファン・ベートーヴェン(1770-1827)の創作を見渡したとき、バレエ『プロメテウスの創造物』の重要性はもっと見直されてよい。このプロメテウスという題材に、若き日のベートーヴェンは心を奪われ、自身が芸術の世界におけるプロメテウスたらんと考えていた節が窺われる。
 『プロメテウスの創造物』は、イタリアのバレエダンサー・振付師だったサルヴァトーレ・ヴィガーノの委嘱により、1800〜01年に作曲され、同年3月21日にホーフブルク劇場で初演されている。プロメテウスは、人間に火を与えたために神々の怒りを買い、猛禽に内臓を日々ついばまれる永遠の責め苦を負う人物としてのイメージが強い。だが、ヴィガーノとベートーヴェンが描こうとするプロメテウスは、ものを知らぬみずからの泥人形たる「創造物」、つまり民衆に対して高尚な芸術と学問を授けるという、啓蒙時代の君主・あるいは哲学者としての役割を負わされている。
 つまり、このプロメテウスは、ハプスブルク帝国のイタリア占領に対して果敢に立ち向かう若きフランスの英雄、ナポレオン・ボナパルトのイメージをかたどったものであった。この第16曲・終曲で用いられている旋律は、作品35のピアノ変奏曲、そして『交響曲第3番』第4楽章で用いられる。この旋律が、次世代を救うプロメテウス、ナポレオン、そして新しい時代に相応しい革命の高貴な精神を表している、ということになる。
 19世紀初頭、ウィーンを首都とする当時のオーストリア帝国では、皇帝がなお強大な権力を保っていたが、台頭する大国フランスを前に次々と領土を失い、大きな危機に直面していた。ヨーロッパ社会に新たな秩序を生み出そうとしていたナポレオンの声望はウィーンでも高く、ベートーヴェンもナポレオンの生き様に大きな共感を抱いていた。『プロメテウスの創造物』終曲の主題を用いた、変ホ長調による『ピアノ変奏曲』作品35を作り上げた直後の1803年、この交響曲のスケッチが最初の三つの楽章だけ書き付けられた。第4楽章の主要部分には、『プロメテウス』終曲とこの『ピアノ変奏曲』を用いることを前提としていたためである。1804年の夏には総譜までが浄書されていたが、初演は1805年4月のことである。この間、04年5月にはナポレオンが皇帝に即位し、12月には戴冠式が挙行された。
 はじめ「ボナパルト」と題されていたこの曲は、ナポレオンが皇帝に即位したことを聞き及んだベートーヴェンが激怒し、表紙を破り捨てて「エロイカ(英雄)」と書き直した、といわれているが、実際には表紙は破り捨てられてはおらず、単に書き直されたに過ぎない。
 1802年、ベートーヴェンのもとに「革命」をテーマとしたピアノ・ソナタの作曲依頼があったが、革命への熱は醒めていた作曲家は言下に断ってしまう。その後の「英雄交響曲 Sinfonia eroica」、副題に「ある偉大な人物の思い出を記念して作曲された」と付された作品が、もはや現在のナポレオンのことだけを念頭に置いたものではないことが窺える。すなわち、まだナポレオンが「英雄」として光り輝いていた、まさに人類に知性と芸術を与える「プロメテウス」であった時代の想い出をもとに書かれたもの、ということになろう。
 とりわけ、この作品における第1楽章は、ソナタ形式の各部分、提示部・展開部・再現部・コーダがほぼ同じ長さを有し、それまでの交響曲の概念を覆すほどの規模に拡大されている。ここにこそ、この音楽の世界にも「革命」をもたらそうとしたベートーヴェンの意気込みが感じられよう。第2楽章において死した英雄が葬られる「葬送行進曲」が奏でられるものの、第3楽章で勇壮に、三本のホルンとともに再び復活してみせるのは、やはりプロメテウスがいちど神に死を与えられつつも、再び蘇ることを念頭に置いているのではなかろうか。普通ならばソナタ形式で作曲される第4楽章が変奏曲でできているのは、もちろん『ピアノ変奏曲』作品35を下敷きにした故であり、理想と調和の世界が徐々に広がっていく様を描いているようにも見える。ただ、闘争を経て新たな高みへと至る、という英雄的なイメージをソナタ形式で描くことを放棄し、すでに過去の人となった英雄の思い出を回想するかのような変奏曲という形式が選ばれたことは、かなり深い底意があるようにも思われる。
 
●作曲年代 1804年
●初  演 (公開)1805年4月7日。指揮:ルートヴィヒ・ファン・ベートーヴェン。ウィーン、アン・デア・ウィーン劇場にて。
●楽器編成
フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン3、トランペット2、ティンパニ、弦5部
 

曲目解説:(C) 広瀬大介(音楽学・音楽評論)(無断転載を禁じる)
 
歌詞対訳:(C) 三ヶ尻 正(無断転載を禁じる)
 
 
 
 
 
 
 
 
                                     
 
 
公益社団法人大阪交響楽団
Osaka Symphony Orchestra
〒590-0074
大阪府堺市堺区
北花田口町3-1-15 東洋ビル4F
TEL:072-226-5533
FAX:072-226-5544
 
 
四国支局
〒790-0051
愛媛県松山市生石町
649-11-402
TEL:089-947-4751
FAX:089-934-3577
 
 
201309301658395847.jpg
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
<<公益社団法人大阪交響楽団>> 〒590-0074 大阪府堺市堺区北花田口町3-1-15 東洋ビル4F TEL:072-226-5533 FAX:072-226-5544