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第241回 定期演奏会   7月16日(木)
小泉 ひろし 
周防 彩子

大阪交響楽団40年の軌跡メモリアルシリーズ
2020年7月16日(木)19時00分開演 
 
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)
交響曲 第35番 ニ長調 K.385 「ハフナー」
 
 ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)が故郷ザルツブルクの宮廷楽団を辞め、新天地ウィーンに移って2年目を迎えた1782年、故郷の父レオポルトから新たな仕事の依頼が舞い込んだ。ザルツブルクの名門ハフナー家の若い当主ジークムントが爵位を授かるので、その祝典用の音楽を書いてほしいというのだ。ジークムントとは幼少からの友人であったモーツァルトは、この仕事を引き受ける。
 しかし、引き受けたはよいものの、すでに取り組んでいる作品があり、モーツァルトはすぐに新作にとりかかれない。しかも自身の結婚も間近に控えていた。父への手紙で、多忙の身であることを釈明したうえで、「なるべく早く、しかしよい作品を書きあげます」と返信している。
 続く父への手紙では、第1楽章のみが送られた。「最初のアレグロしか入っていないのでびっくりしたでしょう。でもどうしようもなかったのです。大急ぎでほかにセレナードを一曲書かなければならなかったのです」と書き、さらに続く便で「ぼくの誠意はわかってください。できないものはできないのです。やっつけ仕事はしたくありません。終楽章は送りましたが、次の便まで全曲をお送りすることはできません」と、開き直った様子で言いわけを綴っている。速筆のイメージのあるモーツァルトだが、この文面からは締め切りに追われて四苦八苦する様子が伝わってくる。
 最終的に作品が祝宴に間に合ったのかどうかははっきりしない。しかし、曲の出来ばえには満足していたのだろう。翌年3月にウィーンで開かれた演奏会のために、モーツァルトはこの曲を再利用している。その際、当初含まれていた行進曲が割愛されて現状の4楽章構成とされ、楽器編成にフルート2本とクラリネット2本が追加された。当日の演奏会は大成功を収め、モーツァルトは臨席した皇帝が拍手喝采していたことを父への手紙に誇らしげに書いている。
 第1楽章 アレグロ・コン・スピリト 2オクターヴにわたってヴァイオリンが跳躍し、勢いよく開始される。
 第2楽章 アンダンテ 優雅で温和な緩徐楽章。
 第3楽章 メヌエット 明るく活発なメヌエットの間に、典雅なトリオがはさまれる。
 第4楽章 プレスト 喜びがはじけるエネルギッシュなフィナーレ。父への手紙には「できるだけ速く演奏されなければなりません」と記されている。
 
 作曲年代 1782~83年
 初  演
1783年3月23日、ウィーン、ブルク劇場
 楽器編成
オーボエ2(後にフルート2、クラリネット2を付加)、ファゴット2、ホルン2、トランペット2、ティンパニ、弦5部
 
 
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)
モテット「踊れ、喜べ、汝幸いなる魂よ」 K.165(158a)
 
 モーツァルトが早熟の天才であったことはよく知られているが、それにしてもこの傑作が17歳目前に書かれているという事実には驚かざるを得ない。
 1773年、モーツァルトは父レオポルトとともに就職活動を目的とした長期にわたるイタリア旅行に出向いていた。ミラノでオペラ「ルーチョ・シッラ」が上演された際、歌手陣のひとりに当時の有名なカストラート歌手、ヴェナンツィオ・ラウッツィーニが招かれる。モテット「踊れ、喜べ、汝幸いなる魂よ(エクスルターテ・ユビラーテ)」K.165は、そのラウッツィーニのために書かれた。細かく軽やかな音の動きや幅広い跳躍が求められ、華麗な歌唱技術が発揮される。現代ではソプラノのためのレパートリーとして定着している。
 第1楽章 アレグロ 晴れやかで祝祭的な序奏に、のびやかで技巧的な独唱が続く。楽章のおわりに、短いレチタティーヴォがはさまれる。
 第2楽章 アンダンテ 清澄で陰影に富んだ楽想はオペラの一場面のよう。切れ目なく第3楽章に続く。
 第3楽章 モルト・アレグロ 「アレルヤ」の第一声で導かれる、もっとも有名な楽章。独唱とオーケストラが一体となった歓喜の賛歌。
 
 作曲年代 1773年
 初  演
1773年1月17日、テアチノ派修道会修道院、ミラノ
 楽器編成
独唱ソプラノ、オーボエ2(フルート2の1780年異稿あり)、ホルン2、弦5部、オルガン
 
 
 
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)
交響曲 第6番 ヘ長調 作品68 「田園」
 
 ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770~1827)が残した9つの交響曲のなかでも異彩を放っているのが、交響曲第6番「田園」だ。標題が添えられ、具体的な自然描写が見られ、楽章数も通常の4楽章構成ではなく全5楽章。ベートーヴェン自身の言葉によれば、この曲は「田園交響曲、あるいは田舎の生活の思い出。絵画というよりも感情の表出」。各楽章には標題が添えられている。
 自然の光景や田舎の暮らしを題材に交響曲を書くというアイディアは、ベートーヴェン独自のものではない。たとえば、ベートーヴェンに先んじて、クネヒトは「自然の音楽的描写」を書いている。この作品がベートーヴェンを触発したとしてもおかしくはないだろう。なにしろクネヒトの作品もまた全5楽章からなり、第1楽章の「美しい田舎。太陽は光り輝き、風は穏やかに舞い、谷間では小川が流れ、鳥たちがさえずる」など、各楽章にベートーヴェンの「田園」とよく似た標題が添えられているのだ。エマニュエル・レベル著の『ナチュール 自然と音楽』によれば、当時60作以上もの「田園交響曲」が書かれたという。これは逆説的にベートーヴェンの独創性の高さを物語っている。それだけ多くの作品が書かれたにもかかわらず、現代までレパートリーとして生き残ったのはベートーヴェンのみなのだから。
 初演ではベートーヴェンの新作がずらりと並べられ、この「田園」に加えて、交響曲第5番「運命」も披露されている。強い緊迫感に貫かれ抽象的な音のドラマが展開される「運命」と、穏やかな楽想を主体として具体的な自然描写を連想させる「田園」は一見対照的に見える。その一方で、後半楽章を切れ目なくつなげたり、終盤で楽器編成を拡大するといった趣向は両作に共通する。
 第1楽章「田舎に着いたときの愉快な気分」 アレグロ・マ・ノン・トロッポ。のどかな主題が風光明媚な田園風景を想起させる。
 第2楽章「小川のほとり」 アンダンテ・モルト・モート 流麗な楽想が小川のせせらぎを思わせる。終盤ではフルートがナイチンゲール、オーボエがウズラ、クラリネットがカッコウの鳴き声を模倣する。
 第3楽章「田舎の人たちの楽しい集い」 アレグロ スケルツォに相当するひなびた舞曲。第3楽章から第5楽章までは切れ目なく続く。
 第4楽章「雷と嵐」 アレグロ 不吉な遠雷が低弦でほのめかされる。ピッコロ、ティンパニ、トロンボーンが加わり、激しい嵐が到来する。
 第5楽章「牧歌、嵐の後の喜びと感謝」 アレグレット 嵐は去り、陶然とした喜びの牧歌が奏でられる。
 
 作曲年代 1807~08年
 初  演
1808年12月22日、ウィーン、アン・デア・ウィーン劇場、作曲者自身の指揮
 楽器編成
ピッコロ、フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2、トランペット2、トロンボーン2、ティンパニ、弦5部
 
 
曲目解説:(C) 飯尾洋一(音楽ジャーナリスト) (無断転載を禁じる)
 
歌詞対訳:(C) 三ヶ尻正(無断転載を禁じる)
 
 
                                     
 
 
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