01234439
 

2019年度 名曲コンサート 曲目解説

 
 
第109回名曲コンサート   1月12日(日)
大井 剛史
阪田 知樹 

 
ベートーヴェン~リスト~ブラームス
 
2020年1月12日(日)
昼の部 13時30分/夜の部 17時00分 開演
 
ヨハネス・ブラームス(1833-1897)
ハンガリ-舞曲より 第1番 ト短調、第3番 ヘ長調、第10番 ヘ長調
 
 名曲とは?という問いには「時代を越えて受け継がれる優れた楽曲」と答えよう。ではなぜその作品が人々に受け入れられたのか。世の中の雰囲気に左右されることもあるだろう。名作誕生の法則はわからなくても、名曲の条件はいくつかあげられるのではないか。堂々と構成力を持つ作品、奏者から無限の可能性を引き出す魔法のような作品、伝統的な音楽の力強さを描き出す作品。共通するのは、音楽が聴く者の心に刺さり、熱い想いを湧きあがらせること。「名曲コンサート」は、聴く人と演奏家との間で、作品を通じて感情の関係性を結ぶことのできる絶好の機会になるに違いない。
 本日の演奏会冒頭を飾る『ハンガリー舞曲』は、もともとロマの伝承する音楽に基づき、ブラームスが編曲したピアノ連弾作品。ハンガリーに伝わる民族音楽として採譜を続けて作品をまとめ、ピアノ連弾曲集に仕上げた。まず第1集(第1番~5番)、第2集(第6番~第10番)が1869年に出版されると、大変なヒット作となる。CDやラジオ・テレビ、インターネットがなかった時代、楽譜はメディアとして一般の人々に広く音楽を届ける手段だった。さらに第3集、第4集がシリーズ出版され、合計21曲が世に出る。その後、ブラームス自身の管弦楽編曲により、1874年に自作自演されたのが本日演奏される3曲。第1番ト短調と第3番ヘ長調は同じ調性で、第10番は原曲がホ長調だったのを自身でヘ長調に移調して、オーケストラ楽器の可能性を最大限に引き出すように工夫された。
 第1番(アレグロ・モルト)は、おそらく誰もが耳にしたことのあるメロディーだろう。渦を巻いて力強く湧きあがるような弦楽器群の音に管楽器の音が軽やかに降り注ぐ。オーケストラ奏者たちの息使いや弓の勢いで、会場の空気が大きくうねり始める。オーケストラ合奏の力強さは名曲コンサートの開始を告げるにふさわしい。
 第3番(アレグレット)は、一転して穏やかで牧歌的な管楽器のメロディーが印象的。弦楽器のピッチカート伴奏、一瞬のスケルツォを挟んで、再度冒頭同様の旋律が奏される。
 第10番(プレスト)は、これも小品だが、疾走するフレーズの速さに特徴がある。3曲ともに遅いテンポの部分は哀愁を帯び、速い部分は生き生きと活力に溢れていることが共通点である。その緩急によるメリハリがこの作品の魅力だ。
 
作曲年代 1850年代~1860年代に採譜編曲、1873年作曲家自身による管弦楽版編曲。
初  演 【管弦楽版】1874年2月5日。ヨハネス・ブラームス指揮。ライプツィヒにて。
楽器編成 フルート2、ピッコロ、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、ティンパニ、大太鼓、シンバル、トライアングル、弦5部
 
 
 
フランツ・リスト(1811-1886)
ピアノ協奏曲 第1番 変ホ長調
 
 超絶技巧を駆使し、ピアノの魔術師ともいわれたリスト。当時の社交界の花形でもあり、きらびやかな音が繰りだされるこの作品の初演も当然、作曲者自身がソリストだった。その時の指揮者は、『幻想交響曲』の作曲で有名なエクトル・ベルリオーズ。名作曲家同士の競演となった。
 4つの楽章からなる20分ほどの本作品は、楽章間の切れ目なく演奏される。
 第1楽章(アレグロ・マエストーソ/変ホ長調)はオーケストラとピアノの競演による力強い始まり。自由なソナタ形式をとる。第2楽章(クワジ・アダージョ/ロ長調)の前半は弱音器を付けた弦楽器と憂いに満ちたピアノの演奏で始まる。後半はフルート、クラリネット、オーボエやチェロの短い独奏をピアノのトリルが引き出す役割となるなど、互いの会話が楽しい。そして第3楽章(アレグレット・ヴィヴァーチェ-アレグロ・アニマート/変ホ長調)からのソロ・トライアングルに注目だ。別名「トライアングル協奏曲」とも言われたくらいの(この作品の形式の自由さを批判した当時の音楽評論家ハンスリックがそう皮肉ったと伝わる)活躍ぶり(と言ってよいだろう)なのである。第4楽章(アレグロ・マルツィアーレ・アニマート/変ホ長調)はこれまでの旋律が繰り返され、クライマックスに向かってテンポを上げて駆け抜ける。ピアノで巧みに生み出される技にオーケストラが全身全霊で応える輝きに満ちたピアノ協奏曲である。
 
作曲年代 1830年頃~1849年。1856年にも推敲。
初  演
1855年2月17日。フランツ・リスト独奏、エクトル・ベルリオーズ指揮。ドイツ・ヴァイマール宮廷にて。
楽器編成 独奏ピアノ、フルート2、ピッコロ、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2、トランペット2、トロンボーン3、ティンパニ、トライアングル、シンバル、弦5部
 
 
 
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)
交響曲 第7番 イ長調 作品92
 
 ブラームスはベートーヴェンの存在を神のように畏(おそ)れていた。「巨人(ベートーヴェン)の足音が常に背後に歩み寄るのが聞こえると、我々のような作曲家がどんな気持ちを味わうか」と、その偉大さを表現した。そのベートーヴェンが作曲した9つの交響曲の中でも、この第7番はダイナミックでドライブ感あふれる中に、軽やかさも持ち合わせる。古今東西、数々の名演により今日まで受け継がれてきた古典派交響曲の至宝だ。
 初演は1813年、作曲者本人の指揮による。4月のルドルフ大公公邸での非公開演奏の後、12月にウィーン大学講堂での公開演奏会が行われると、その成功から、ベートーヴェンの作曲家としての地位はゆるぎないものとなる。
 第1楽章(ポコ・ソステヌート-ヴィヴァーチェ/イ長調)は序奏を伴うソナタ形式をとる。冒頭の力強い弦楽器の上行音型、管楽器との掛け合いなどからなる4分の4拍子の序奏だけで聴く者の気持ちを高揚させ、主部の8分の6拍子によるヴィヴァーチェとなり、軽やかな付点音符をモチーフに木管楽器や弦楽器に先導されながら曲が進行してゆく。
 第2楽章(アレグレット/イ短調)は、第1楽章から一転して、憂いと厳かさを兼ね備えた曲調を持つ。こうした他の楽章との対比もこの作品の面白さだろう。ベートーヴェンの交響曲の第2楽章は、緩徐楽章と呼ばれ「遅く」と指示されることが多い。この作品でも他の3つの楽章に比べればゆっくり展開する。が、作品の推進力は衰えることがない。聴く者の豊かな情感を呼び起こし、広大な草原や森が目の前に広がるような印象を持つ。
 第3楽章(プレスト-アッサイ・メノ・プレスト/ヘ長調・トリオはニ長調)は、スケルツォとトリオが繰り返される構成。トリオ部はかなりゆっくりとしたテンポで奏される。
 第4楽章(アレグロ・コン・ブリオ/イ長調)は、ソナタ形式。第3楽章から息つく間もなく第4楽章に突入、第1主題で一気に盛り上がる。4分の2拍子の弱拍にはっきりとしたアクセントが置かれて喜びに満ちた乱舞とも言えるような音型が繰り返される。
 本日演奏される3作は、発表されてから長い間、数々の名演によって受け継がれてきた疑うことのない名曲ばかり。ブラームス、リスト、ベートーヴェンと18世紀終わりから19世紀に活躍した作曲家作品で時代を遡るプログラム構成によって、演奏する者に限りない表現の可能性を与えてくれるプログラム。ピアノの阪田知樹、指揮の大井剛史、そして大阪交響楽団の名手たちが聴く者からどんな想いを引き出してくれるのかが楽しみだ。
 
作曲年代 1811年~1812年。
初  演 1813年12月8日。作曲家自身の指揮。ウィーン大学講堂の公開演奏会にて。
(非公開初演は1813年4月。ルドルフ大公邸にて)
楽器編成 フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2、トランペット2、ティンパニ、弦5部
 

     (C) 石田麻子(舞台芸術政策研究)(無断転載を禁ずる)

 

 

大井剛史写真(C)K.Miura
阪田知樹写真(C)HIDEKI NAMAI

 

 

 

公益社団法人大阪交響楽団
Osaka Symphony Orchestra
〒590-0074
大阪府堺市堺区
北花田口町3-1-15 東洋ビル4F
TEL:072-226-5533
FAX:072-226-5544
 
 
四国支局
〒790-0051
愛媛県松山市生石町
649-11-402
TEL:089-947-4751
FAX:089-934-3577
 
 
201309301658395847.jpg
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
<<公益社団法人大阪交響楽団>> 〒590-0074 大阪府堺市堺区北花田口町3-1-15 東洋ビル4F TEL:072-226-5533 FAX:072-226-5544