01175438
 
 
 
第236回 定期演奏会   1月17日(金)
本名徹次 (C)Hai Nam Nguyen

2020年1月17日(金)19時00分開演
 
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)
ピアノ協奏曲 第2番 変ロ長調 作品19
 
 最近1番と共に人気の高い魅力作。ベートーヴェンのピアノ協奏曲は番号付きの5曲以外にも、0番とされることのある若書きの変ホ長調Wo0.4と6番とされることもある、ヴァイオリン協奏曲をベートーヴェン自身がピアノ用に改作したものがある。このうち前者は自筆譜が紛失し不完全な写譜だけが残されているが、1784年に演奏された記録もあるので一応、完成していたようである。そもそもモーツァルトやベートーヴェンのように作曲家がソリストを兼ねている場合、オーケストラ譜をまず完成させ、ピアノは後回しにされてしまうことが多く、初演時のソロパートは即興で演奏されることが多かった。モーツァルトのピアノ作品などで譜面が不完全なことが多々あるのはこのためだが、この曲も1801年12月に出版されるまではキチンとしたピアノ譜は存在せずベートーヴェンが即興で弾いていたようだ。
 この曲は以前1793年頃に作曲開始とされていたが最近の研究では前作変ホ長調に続き86年頃からスケッチが書かれたようで95年3月29日の初演まで何回も書き直され複数の稿が存在したらしい。現在ロンドWo0.6として残されている楽章もこの時現行のロンドに差し替えられているが、ことによるとそれ以前に初期の稿で演奏されたことがあるのかもしれない。そして98年から再び改訂されようやく1801年12月に出版されたがその時既に次作が「1番」として出版されていたので2番とされたのである。
 最初期作品だけにベートーヴェンとしては異例に小規模な管弦楽編成となっているがハイドン「王妃」やシューベルトの5番などもこの編成によっている。
 第1楽章はベートーヴェン得意のアレグロ・コン・ブリオなのでロココの優雅さではなくエネルギッシュな精悍さが目立つ。型通り二重提示部を取るがオケだけの第1提示部では第2主題を欠く。フーガで開始される長大なカデンツァは1809年「皇帝」作曲中の作なので聴き応えがありコーダは珍しく第2主題で終わる。
 第2楽章は変ホ長調のアダージョでこれまたベートーヴェン得意の変奏曲形式で構成され初期作ながら充実している。
 第3楽章ロンドはカッコウの鳴き声を模したのか3度の下降音形で始まるがスフォルツァンドで強拍をずらし飛び跳ねるようにリズミックで楽しい主題で始まる。
 
   作曲年代 1786年から95年
 初  演 1795年3月29日ウィーンブルク劇場。ピアノ独奏はベートーヴェン自身。
 楽器編成 独奏ピアノ、フルート、オーボエ2、ファゴット2、ホルン2、弦5部
 
 
 
アントン・ブルックナー(1824-1896)
交響曲 第3番 ニ短調 (ノヴァーク版 第2稿 1877)
 
 大曲指向の昨今はマーラーなど1時間を遥かに超える一晩一曲の大曲が持て囃されブルックナーでも5、7、8、9に人気が集中してしまうのもやむを得ないかもしれないが晩年の宇野功芳氏はブルックナー交響曲のベストスリーを3、8、9としていた。並みのブルオタなら3番より構えが大きく演奏効果も上がる5番を選んでしまうのが常であろう。しかしことブルックナーの魅力という点では3番の方が上回っている点も多いと思われるのである。それは三つの稿全てに細部は異なるもののミステリオーソと表示された第1楽章に特に著しい。マーラーの7番の先駆のような夜曲のイメージ濃厚、そしてワーグナーを魅了したと言われる夜のしじまから聞こえて来るようなトランペット主題の魅力といいソナタ形式を最もゆったり広々と使った3番の第1楽章はブルックナーでは9番と双璧ではあるまいか。さらにフィナーレはともかくアダージョもこの2稿なら決して5番に負けてはいまい。スケルツォもこと楽しさという点では5番を凌駕するだろう。また3番は改訂の実態の資料がほとんど残されていない5番に比べ、版の問題がブルックナー交響曲中最も複雑であり豊富な資料が出版されているのもファンの興味を惹こう。数年前東京では3ヶ月足らずの間に3番の三つの稿全てをナマで聴けるという稀有の機会があったが正にブルックナー王国日本ならではのことといえよう。
 ブルックナーの交響曲には何故かハ短調とニ短調の曲が多く共に3曲ずつを数える。どちらも重要な節目に書かれているがやはりベートーヴェンの、前者は「運命」、後者は「第9」の影響だろうか。3番は0番に続く第二のニ短調交響曲だが1876年にブラームスの1番を初演することになる往年の大指揮者オットー・デッソフに0番を見せた際「いったい主題はどこにあるのかね?」と質問されたことに懲りたのか3番では、はっきり交響曲らしい主題が二つも設定されたのである。トランペットで提示される主要主題はフィナーレにも現れ、盛り上がった際トゥッティで現れる巨大な落下する超人的な主題は明らかにベートーヴェン「第9」を模したものであろう。ブラームスのピアノ協奏曲第1番を聴き「これは交響曲の主題だ」と喝破したブルックナー。実際それはブラームスの最初の交響曲になる筈の曲をピアノ協奏曲に改作したものだったがブルックナー自身も交響曲の主題にそのようなイメージを持っていたことは疑いなく「ロマンティック」フィナーレや最後の交響曲である9番もこの路線を採った。そして0番と3番の第1楽章コーダの葬送行進曲を想わせるオスティナートの半音階進行もベートーヴェンを踏襲したものなのである。
 最も演奏頻度が高い3稿は完成度は著しく高いが第2楽章とフィナーレが短縮されすぎており2稿と一長一短か。今回演奏されるノヴァーク版2稿(1877)は73年の初稿完成後74年に手をつけ76年秋から77年4月まで本格的に改訂されワーグナーからの引用もほとんど削除された。77年12月にはブルックナー自身がウィーンフィルを振って初演、翌78年初版が発行されたのである。この初演、本来は65年にシューベルトの「未完成」を発見し初演したヨハン・ヘルベックの指揮による筈がヘルベックの急死によりブルックナー本人が振るハメになってしまい案の定大失敗してしまうのである。2稿には1950年発行のエーザー版もあるがこれは1878年の初版を再現したもので1980年に出版されたノヴァーク版2稿は初版出版の際の印刷用原稿が元になっている。大きな相違はエーザー版は第1楽章の67・68小節のゲネラルパウゼがカットされていることとスケルツォのコーダがないことの2点であり、朝比奈隆は3番を6回演奏しているが最初の2回はエーザー版使用、次がこのノヴァーク版第2稿の日本初演(於大阪)、その後は3稿を3回(CD用の録音含む)振り、最後は初登場となる筈だったオペラシティで初稿を演奏したいと熱望したが遂に見果てぬ夢と終わったのであった。
 第1楽章 : 主題を三つ持つ独特のソナタ形式を採りブルックナーユニゾン、ブルックナーリズムなど彼独特の書法も用いられる。後期形式の9番の第1楽章では展開部と再現部が融合しているが3番ではまだ独立しておりことに円熟期のブルックナーが作曲し直した3稿は極めて充実している。
 第2楽章 : アダージョだけ四つの稿が存在。初稿は278小節だったが最初の改訂では何と289小節に増やされている。そしてこの形のまま初演用にパート譜が作成されたが初演前に再び改訂、251小節に刈り込まれ訂正箇所には紙を貼って対応した。これがエーザー版とノヴァーク版2稿に採用されているが172小節からの2回目のラングザマー後半の金管の和音など実に美しく8番を連想するほど。これを欠く最終の4稿は222小節しかなく物足りない。
 第3楽章 : 2稿は金管の扱い方などオーケストレーションがややぎこちなくD音で終止。0番、1番、2番のスケルツォのようにコーダがある。3稿はずっと洗練されておりA音で終わるがスケルツォは3稿に分があると思われる。
 第4楽章 : 疾走する第1主題は展開部でも多用されるが重複感を避けるためか第3稿の再現部ではカットされてしまった。だがこの第2稿ではきちんと再現されるのである。また第2主題はチャーミングなポルカと荘重なコラールの組み合わせだが、かつてFMのクラシック番組のエンディングに使用されていたほど印象的な音楽である。ブルックナーが友人と夜のウィーンの街を散策していた時、ある大邸宅で開催されていた舞踏会の音楽が漏れて来た。それを聴いたブルックナーはその近くの教会に眠っている筈の大建築家の棺を思い起こし、友人に私の今書いている交響曲のポルカは現世の快楽と喜びを表しコラールは人生の悲哀と苦悩を表すのだよと語ったそうである。さらに第2稿では第1楽章第2主題の印象的な回想があり、2稿と3稿では第1楽章の主要主題が回帰し大団円となる。
 
   作曲年代 1872年秋から73年12月31日(初稿)
 初  演 1877年12月16日第2稿による。ウィーンフィル。ブルックナー自身の指揮。
 楽器編成 フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、ティンパニ、弦5部
 
 
 
(C) 浅岡弘和(音楽評論家)
 
(無断転載を禁じる)
 
 
 
公益社団法人大阪交響楽団
Osaka Symphony Orchestra
〒590-0074
大阪府堺市堺区
北花田口町3-1-15 東洋ビル4F
TEL:072-226-5533
FAX:072-226-5544
 
 
四国支局
〒790-0051
愛媛県松山市生石町
649-11-402
TEL:089-947-4751
FAX:089-934-3577
 
 
201309301658395847.jpg
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
<<公益社団法人大阪交響楽団>> 〒590-0074 大阪府堺市堺区北花田口町3-1-15 東洋ビル4F TEL:072-226-5533 FAX:072-226-5544