大阪交響楽団 曲目解説 名曲コンサート 2017年度

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2018年度 名曲コンサート 曲目解説

 
 
第105回名曲コンサート   11月11日(日)
園田 隆一郎  (C)Fabio Parenzan
山本康寛 光岡暁恵 小堀勇介

 
イタリア・オペラの系譜
~ロッシーニ没後150年~
 
2018年11月11日(日)
昼の部 13時30分/夜の部 17時00分 開演
 

 19世紀前半に活躍したジョアキーノ・ロッシーニ(1792~1868)は、1810~29年の20年間に39の歌劇を作曲して歌の技巧を極限まで高め、ロマン派グランド・オペラの扉を開く大作「ウィリアム・テル(ギヨーム・テル)」を最後に37歳の若さでオペラの筆を折った。昨年11月、イタリア上院議会は没後150年に当たる2018年をロッシーニ・イヤーと宣言し、その偉業を称える公演や催しが世界各地で行われている。色彩的で緻密な管弦楽法を時代に先んじて用い、声楽の超絶技巧を追求したロッシーニ。本日はそうした彼の芸術の特質をクローズアップする選曲により、日本における再評価を期している。
 
 
ジョアキーノ・ロッシーニ(1792-1868)
歌劇「チェネレントラ」序曲
 
 1817年1月25日ローマのヴァッレ劇場で初演された「チェネレントラ」は、シンデレラ物語を原作とする2幕の喜歌劇(オペラ・ブッファ)。カボチャの馬車やガラスの靴などのおとぎ話の要素を除去し、打算的な結婚を風刺する大人の劇となっている。序曲は4カ月前にナポリで初演した「新聞」序曲の転用だが、トロンボーンの演奏箇所を増やすなど手を加えている。マエストーソ、変ホ長調、4分の4拍子の序奏に続くアレグロ・ヴィヴァーチェ、4分の2拍子の主部は、弦楽器の軽やかな第一主題、クラリネットが先導する第二主題、フレーズを反復しながら音楽を増強する“ロッシーニ・クレシェンド”を用いた終結部からなる。
 
 
歌劇「セビーリャの理髪師」より “もう逆らうのをやめろ”
 
 ボーマルシェの喜劇を原作に、後見人のいるロジーナに恋したアルマヴィーヴァ伯爵が理髪師フィガロの協力を得て彼女と結ばれるまでを描く2幕の喜歌劇。1816年2月20日ローマのアルジェンティーナ劇場で行われた初演が大失敗を喫し、2日目の上演で成功に転じたことでも知られる。“もう逆らうのをやめろ”は第2幕の終盤でアルマヴィーヴァ伯爵が歌う大アリア。伯爵は身分を明かしてもなお歯向かおうとするバルトロを一喝し、ロジーナに向けて「あなたは束縛から解放された」と優しく呼びかける。後半部は主題と変奏の形式を用い、ロジーナと結ばれる喜びを華麗に歌い上げる。そこでのアジリタ(敏捷な歌唱法)はロッシーニの装飾的な歌の基盤をなす技巧で、ヴォカリーズではなく、常に歌詞を伴う点も特色となっている。
 
 
 
 
歌劇「ウィリアム・テル(ギヨーム・テル)」より “パ・ドゥ・シス”
 
 ドイツの劇作家・詩人シラーの劇『ヴィルヘルム・テル』を原作に、スイス・アルプス地方の民衆が自治と独立を獲得するまでを描く4幕のフランス・オペラ(正式題名は「ギヨーム・テル」)。1829年8月3日パリのオペラ座で初演された。パ・ドゥ・シス(6人の踊り)は第1幕ディヴェルティスマンの冒頭曲で、結婚の神に祝福を求める村人の合唱の後に、3組の新郎新婦が踊るシーンで演奏される。アレグレット、ヘ長調、4分の2拍子。冒頭フォルティシモで3つの和音が鳴らされ、続いて弦楽器の浮き立つリズムの伴奏に乗せて第一ヴァイオリンとオーボエ・ソロが主題を奏する。徐々に楽器を増やして音楽を盛り上げ、クレシェンドを交えた終結部に至る。
 
 
歌劇「ランスへの旅」より “私は出発したいのです”
 
 「セミラーミデ」(1823)を最後にイタリアでの活動に終止符を打ったロッシーニは、フランス王家の作曲家となった。1825年 6月19日パリの王立イタリア劇場で初演した「ランスへの旅」は新王シャルル10世の戴冠を祝う1幕の機会作品で、ランスで行われる戴冠式に参列しようとプロンビエールの温泉宿に集まった各国名士が馬を調達できないと知り、皆で大宴会を繰り広げる喜歌劇。“私は出発したいのです”は第2曲。馬車の転覆で荷物が届かないと知り、気絶したフォルヴィル伯爵夫人が目覚めて歌うアリア。前半部は「これでは出発できません」と大げさに嘆き悲しむアンダンテ、8分の6拍子で、ホルン2本の音楽でアレグロ、4分の4拍子の後半部に転じ、小間使いが届けた箱に素敵な帽子を見つけた喜びを華麗なコロラトゥーラで歌い上げる。
 
 
 
 
歌劇「ウィリアム・テル(ギヨーム・テル)」序曲
 
 前記「ギヨーム・テル」の序曲。自然描写を取り入れた簡潔なシンフォニーで、次の四つの部分からなる。

1) チェロの五重奏と補助奏者による47小節の序奏(アンダンテ、ホ短調、4分の3拍子)。2度介在するティンパニのトレモロが嵐の予兆となる。

2) 嵐の音楽(アレグロ、ホ短調、4分の4拍子)。不穏な風を暗示する音楽で始まり、半音階の下向音型、3本のトロンボーンとファゴットの上向音型と打楽器を用いて激しい雷雨が通り過ぎる様子を活写する。

3) 嵐の後の爽やかな自然をイングリッシュ・ホルンの旋律で表し、フルート・ソロが美しく彩る(アンダンティーノ、ト長調、8分の3拍子)。主旋律はスイスの牛飼いの音楽「ラン・デ・ヴァシュ」を模している。

4) トランペットとホルンのファンファーレで開始される輝かしいフィナーレ(アレグロ・ヴィヴァーチェ、ホ長調、4分の2拍子)。
 
 
歌劇「どろぼうかささぎ」序曲
 
 1817年5月31日ミラノのスカラ座初演の「どろぼうかささぎ」は、銀のスプーンを盗んだと疑われた無実の小間使いが死刑宣告を受け、刑の執行直前に鳥(カササギ)の仕業と判明して救われるまでを描く2幕のメロドラマ。序曲は2つの部分からなり、処刑を暗示する小太鼓の連打で始まる序奏は壮麗な行進曲で、小太鼓の連打を挟んでクレシェンドしながら属七和音でピークを迎える(マエストーソ・マルツィアーレ、ホ長調、4分の4拍子)。続く主部は2つの主題をもち、第一主題は弦楽器の三連音を交えた旋律で、短調から長調に転じてフォルティシモの力強い音楽となる。第二主題はオーボエの軽快な旋律で、ロッシーニ・クレシェンドを経て2つの主題とクレシェンドを再現し、華やかに閉じられる(アレグロ、ホ短調~ホ長調、4分の3拍子)。
 
 
歌劇「オテッロ」より “ああ、なぜ私の苦しみに”
 
 1816年12月4日ナポリのフォンド劇場で初演された3幕の正歌劇(オペラ・セリア)。舞台上で殺人と自害をリアルに描き、19世紀メロドラマの誕生を告げた記念碑的作品でもある。原作はシェイクスピアの悲劇『オセロー』に遡るが、フランス語の翻案を基に台本が作られ、オテッロがデズデーモナの不貞を疑うハンカチが手紙に変わり、デズデーモナが絞殺ではなく刺殺されるなどの違いがある。“ああ、なぜ私の苦しみに”は第2幕、デズデーモナに恋するロドリーゴが、「私はもうあの人の妻です」と拒否された驚きで始まるアリア。憐れんでもらえぬ苦しみを抒情的に吐露し(マエストーソ、変ホ長調、4分の4拍子)、アレグロの経過部で感情を高め、クラリネット・ソロの前奏をもつ後半部で復讐の感情を、ハイCの高音を交えて高らかに歌う。
 
 
 
 
歌劇「アルミ-ダ」より “バレエ音楽”
 
 タッソの叙事詩『解放されたイェルサレム』を原作に、1817年11月9日ナポリのサン・カルロ劇場で初演された3幕の正歌劇。魔女アルミーダを主人公とする歌劇はリュリ、ヘンデル、グルックなど18世紀末までに約70作生み出されたが、ロッシーニの時代には古風な題材とあって人気が上がらず、マリア・カラスの主演した1952年の復活上演で再評価された。バレエ音楽は第2幕の末尾に、次の4つの部分が切れ目なく演奏される──トランペットのファンファーレに先導される華やかなマルツィアーレ(ハ長調、4分の4拍子)~チェロ独奏の甘美な旋律を種々の楽器が変奏するアンダンテ(変ホ長調、4分の2拍子)~木管楽器による軽快な旋律のアレグロ・モデラート(ト長調、4分の3拍子)~2種の音楽によるヴィヴァーチェ(変ホ長調、8分の3拍子)。
 
 
歌劇「オテッロ」より 三重唱 “さあ来い、お前の血に復讐を”
 
 前記「オテッロ」第2幕で歌われる大規模な三重唱。前半部はイアーゴに騙されデズデーモナの不貞を確信したオテッロとロドリーゴの二重唱。「侮辱は君の血で償ってもらうぞ」と睨み合う2人は旋律を共有しつつ、テノールの超高音ハイDも交えて激しく対立する(アレグロ、ハ長調、4分の4拍子)。決闘に発展する刹那、デズデーモナが駆け込んで制止しようとし、困惑の三重唱となる(アンダンテ・マエストーソ、変ホ長調、4分の2拍子)。速度、調性、拍子を戻した終結部は決闘の場に向かおうとする2人とデズデーモナの哀願が交錯し、絶望して倒れた彼女は置き去りにされてしまう。
 
 
 
 
曲目解説:(C) 水谷 彰良(音楽・オペラ研究家)(無断転載を禁ずる)
 
歌詞対訳:(C) 森田 学無断転載を禁ずる)
 

    

 
 
 
光岡暁恵写真:Photo by Flavio Gallozzi

 

 

 

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