大阪交響楽団 曲目解説 名曲コンサート 2017年度

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2018年度 名曲コンサート 曲目解説

 
 
第101回名曲コンサート  5月19日(土)
高橋 直史

 
“オーストリア・モーツァルトの系譜”
 
 
2018年5月19日(土)
昼の部 13時30分/夜の部 17時00分 開演

 

 
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)
ピアノ協奏曲 第9番 変ホ長調 K.271 「ジュノム」
 
 ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756~91)は1763年、家族とともにフランスやオランダ、ロンドンに旅行し、パリではショーベルト、ロンドンではバッハの末息子クリスティアン・バッハと出会い、多くの経験を積んだ。このザルツブルク時代に彼が最初に手掛けたのがピアノ協奏曲である。やがてザルツブルクの大司教との折り合いが悪くなり、彼はザルツブルクを離れて1781年にウィーンに移住し、亡くなるまでその地を活動の拠点とした。
 モーツァルトの番号のついているピアノ協奏曲は27曲。本日演奏される第9番は、ザルツブルク時代に書かれたこのジャンルでは、最高傑作に位置すると言ってもいい。タイトルのジュノムは、フランスのピアニスト、ルイーズ・ヴィクトワール・ジュナミがザルツブルクを訪れたのを機に作曲されたことに由来すると言われている。ジュナミの詳細についてはほとんど知られていない。しかしそれまでのピアノ協奏曲よりも、第9番ではピアニストに演奏技巧や表現力の高さが求められており、モーツァルトが彼女の卓越した演奏にインスピレーションを受けたとも言われている。1777年1月に第9番のピアノ協奏曲を完成させたモーツァルトは、ウィーンへ移り住んだ後もこの作品を演奏しており、彼自身が気に入っていた作品と考えられる。
 書法についても充実ぶりがうかがえる。例えば、第1楽章の冒頭からピアノ独奏のパートが登場する。これは、ベートーヴェンの《ピアノ協奏曲》の第4番や第5番にも通じるものであり、当時としては斬新と言ってもよい。そして、第2楽章のハ短調による憂いに満ちた曲想も、ザルツブルク時代の彼のピアノ協奏曲のなかでは特に印象深い。また、楽器間の対話のような表現は、彼の創作の深まりを示している。

 
第1楽章/アレグロ 変ホ長調 4分の4拍子。冒頭において、全奏によるファンファーレに導かれ、ピアノ独奏がそれに呼応するように現われる。この部分が第1主題である。勇壮な第1主題に対し、第2主題はなだらかな旋律線が印象的である。ソナタ形式に基づいており、カデンツァはコーダに置かれている。
 
第2楽章/アンダンティーノ ハ短調 4分の3拍子。憂いを帯びた主たる旋律を、第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが対話のように奏し、ピアノ独奏はそれを受け継ぐ。ドラマティックな転調を経て、副次的な旋律が優美に現われる。綿々と叙情的に歌われてゆく様は、オペラを連想させる。
 
第3楽章/ロンド:プレスト 変ホ長調 2分の2拍子。深淵から沸き起こるような生き生きとしたロンド主題を、ピアノ独奏が提示する。曲中にはカデンツァやゆったりとした典雅な趣のメヌエットも採り入れられている。
 
  作曲年代  1777年1月
  初  演
 不詳
  楽器編成
 独奏ピアノ、 オーボエ2、ホルン2、弦五部
 
 
 
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)
セレナード 第6番 ニ長調 K.239 「セレナータ・ノットゥルナ」
 
 セレナードは、そのほとんどが戸外で行なわれる夜会のための音楽である。そのほか、ノットゥルノやディヴェルティメント、カッサシオンも夜会のための音楽。これらは、基本的に社交目的のための音楽である。セレナードは楽章数が多く、しばしば7楽章から8楽章にもおよび、穏やかで軽快な作風をもつ。楽器編成などについては交響曲のような厳格さはないが、通常はメヌエットを2曲は含む。また、行進曲から始まる場合も多いが、これはセレナードの会場へ入場する際のための音楽である。本日演奏される《セレナード 第6番》K.239も、第1楽章は行進曲である。
 モーツァルトのセレナードは、そのほとんどがザルツブルク時代に、つまり彼の人生の前半に手掛けられ、彼が務めていたザルツブルク大司教の宮廷で開かれる夜会やザルツブルク大学での祝宴などのために書き上げられた。《セレナード 第6番》は、1776年1月に成立した。真冬の夜に戸外で演奏する姿は想像しがたく、この作品は室内で演奏されることを想定し、謝肉祭のために作曲されたものとみられる。また、通常のセレナードよりも楽章数が非常に少ない。管楽器は使用されず、2群の合奏で演奏され、バロック時代の合奏協奏曲(コンチェルト・グロッソ)をイメージさせる。
 なお、タイトルの「セレナータ・ノットゥルナ」は、モーツァルトによる命名ではない。

 
第1楽章/マーチ:マエストーソ ニ長調。ティンパニを交えた全奏が行進曲の開始を告げたのち、独奏による第1ヴァイオリンは主旋律を堂々と表わす。イ長調に転じると、独奏の第1ヴァイオリンは伸びやかな旋律を歌い上げてゆく。三部形式に基づいており、活気あふれる楽章。

第2楽章/メヌエット:ニ長調 4分の3拍子。メヌエット主部では、逆付点リズムが多く用いられており、その引きずるようなリズムに威厳を感じる。トリオはト長調、三連符の動きとともにすっきりとした表情が印象的で、2つのヴァイオリン独奏とヴィオラ独奏、そしてコントラバス独奏のみで演奏される。

第3楽章/ロンド:アレグレット ニ長調 4分の2拍子。軽快なロンド主題は、前打音による装飾音符が特徴。途中でト長調へと変わり、ゆったりとした4分の3拍子によるアダージョに続き、快活なアレグロの部分では民謡風の楽想のエピソードを挿む。
 
   作曲年代 1776年1月
   初  演
不詳
   楽器編成
2つの独奏ヴァイオリン、独奏ヴィオラ、独奏コントラバス、弦五部、ティンパニ
 
 
 
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)
交響曲 第36番 ハ長調 K.425 「リンツ」
 
 ウィーンに移り住んで10年ほどの間に、モーツァルトが作曲した交響曲は第35番から第41番までである。そのうち、第37番はそのほとんどをミヒャエル・ハイドンが作曲していることが分かっている。あとの6曲は、いずれも名曲ぞろいである。
 《交響曲 第36番》はウィーン時代の、1783年10月末から11月初めにかけて作曲される。モーツァルトは1782年にコンスタンツェと結婚したものの、結婚に反対していた父に会って報告をしていなかった。夫妻は、翌夏から秋にかけてザルツブルクを訪れる。その帰途に立ち寄ったリンツで、モーツァルトはきわめて短期間のうちにこの交響曲を書き上げた。第1楽章ではその冒頭に序奏が置かれ、第2楽章にティンパニとトランペットが用いられるなど、この交響曲にはハイドンからの影響が指摘されている。

 
第1楽章/アダージョ ハ長調 4分の3拍子~アレグロ・スピリトーソ 4分の4拍子。付点リズムの醸し出す堂々とした序奏を経て、第1ヴァイオリンが伸びやかな第1主題を奏でる。ほのかに翳りを帯びた第2主題はオーボエとヴァイオリンによって示される。ソナタ形式による活気あふれる楽章。

第2楽章/アンダンテ ヘ長調 8分の6拍子。ゆったりと揺れ動く第1主題を、第1ヴァイオリンが優美に歌い上げてゆく。その一方で、トランペットやティンパニも用いられている。基本的にソナタ形式で書かれており、第2主題はハ短調に転じる。
 
第3楽章/メヌエット ハ長調 4分の3拍子。ゆったりとした典雅なメヌエット主題をオーボエとヴァイオリンが心地よく音の芯を弾ませながら表わす。メヌエット~トリオ~メヌエットの構成で、トリオは流麗さを伴なったレントラー風の音楽。
 
第4楽章/プレスト ハ長調 4分の2拍子。軽快な第1主題は、弦楽器のみの弱奏と強奏によるトゥッティとの対比や対話が鮮やかである。フィナーレもソナタ形式に基づいており、第2主題はト長調の流麗な調べが心に残る。
 
   作曲年代 1783年10月末から11月初め
   初  演
1783年11月4日
   楽器編成
オーボエ2、ファゴット2、ホルン2、トランペット2、ティンパニ、弦五部
 
 (C)道下京子(音楽評論)(無断転載を禁じる)
 
 
 
高橋直史写真 撮影:老川良一
 
 
 
 
 
                                     
 
 
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