大阪交響楽団 2017年度 定期演奏会 曲目解説

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第221回 定期演奏会   9月21日(金)
延原 武春
福原 寿美枝

 
2018年9月21日(金)19時00分開演 
 
 
フランツ・シューベルト(1797-1828)
劇付随音楽「ロザムンデ」序曲 D644
 
 「ロザムンデ」はドイツの女性作家ヘルミーナ・フォン・シェジーが書いた劇の名である。フランツ・ペーター・シューベルト(1797-1828)は1823年にこの劇のために幾つかの付随音楽を作曲した。この劇は1823年12月にウィーンのアン・デア・ウィーン劇場で初演されたが、シェジーの劇の拙さゆえに失敗に終わってしまう。しかしシューベルトの付随音楽は評価され、特にその中の“間奏曲第3番”や“バレエ音楽第2番”は今日まで広く親しまれている。
 もっとも本日演奏される“序曲”は、本来この劇のために書かれたものではなく、もともとゲオルク・フォン・ホフマンの劇「魔法の竪琴」の序曲としてシューベルトが1820年に作曲した曲だった。「ロザムンデ」のための序曲は結局書かれずじまいで、上記の劇初演の際にはシューベルトは自作のオペラ「アルフォンソとエステッラ」の序曲を流用した。その後「アルフォンソとエステッラ」序曲に代えて「魔法の竪琴」の序曲が「ロザムンデ」序曲に転用されたのである。つまり「ロザムンデ」序曲は、本来は劇「ロザムンデ」そのものの内容とはなんの関係もないわけだが、いかにも開幕に相応しい雰囲気溢れる曲で、すっかり「ロザムンデ」序曲として定着したのだった。
 曲は、幻想的な趣の序奏(アンダンテ、ハ短調)の後、明るく軽快なソナタ形式の主部(アレグロ・ヴィヴァーチェ、ハ長調)が続く。
 
●作曲年代 1820年(「魔法の竪琴」序曲として)
●初  演
1820年8月19日 ウィーン(「魔法の竪琴」序曲として)
●楽器編成
フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、ティンパニ、弦5部
 
 
フランツ・シューベルト(1797-1828)
水の上の精霊の歌 D714 作品167
 
 シューベルトは声楽ジャンルの作品も多数残した。特に独唱歌曲(リート)は600曲ほどにのぼり、“歌曲の王”というニックネームで呼ばれているほどだ。独唱歌曲のみならず、合唱や声楽アンサンブル用の作品も夥しい数にのぼる。その中でもとりわけの傑作のひとつに挙げられるのがこの「水の上の精霊の歌」である。
 歌詞として用いられたのは、文豪ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテがスイス旅行中に訪れたシュタウプバッハの滝に霊感を得て作った詩で、天から降り天に戻って再び地上に降りて流れる水の変容ぶりを人の魂に喩えた内容のものである。このゲーテの詩をシューベルトはとりわけ好んでいたようで、1816年にまずこの詩による独唱歌曲D484を試み(未完)、1817年に無伴奏の男声四重唱曲D538、1820年にピアノ伴奏付きの男声四重唱曲D705(未完)を手掛けた後、1821年2月に本日取り上げられる男声八重唱と中低弦という編成による作品を生み出した。本来は声・楽器ともに各パートひとりずつの男声8声(テノール4人、バス4人)と弦楽5重奏(ヴィオラ2人、チェロ2人、コントラバス1人)という編成のために作られているが、パートごとの人数を増やした男声合唱と弦楽合奏の編成で演奏されることが多く、本日もその形で演奏される。男声と中低音域の弦楽器のみによる渋めの響きを生かした崇高かつ思索的な名品である。
 曲はまずアダージョ・モルト、コントラバスのタータタ・タータタというリズムに始まる神秘的な導入に続き、人の魂が水に似ていることが神妙に語られる。程なくピウ・アンダンテに転じて天と地上を行き来する水について歌われ、岩壁からの噴流(バス)や岩に優しく注ぐ波(テノール)などが表現される。続いてウン・ポーコ・ピウ・モッソ、岩に抗して流れる激流を激しい曲想(水流を示すバスと弦声部による16分音符や、水が深みに沈む様を表すテノールの下行の動きが効果的)で表された後、一転牧場を流れる川や星を映す湖が穏やかに歌われる。そしてピウ・モッソで波の愛しい相手である風について述べる印象的な部分を挟んだ後、曲頭のテンポと楽想が回帰、人の魂は水に、人の定めは風に似ていることをしみじみ歌い上げて曲を閉じる。

 
●作曲年代 1821年
●初  演
1821年3月7日 ウィーン
●楽器編成
ヴィオラ2部、チェロ2部、コントラバス、テノール4声、バス4声
 
 
 
 
ヨハネス・ブラームス(1833-1897)
アルト・ラプソディ 作品53
 
 ヨハネス・ブラームス(1833-97)の声楽ジャンルの代表作のひとつであるこの作品も、先のシューベルトと同様、ゲーテの詩に基づくものである。作曲の背景にはブラームスの秘めた恋の想いがあった。彼は1869年2月、「ドイツ・レクイエム」初演で大成功を収め、作曲家としての名声を確たるものとしたが、この頃彼はある女性に深い想いを抱くようになっていた。恩人だった故ローベルト・シューマンとその未亡人クララとの間の三女ユーリエである。若き日のブラームスがクララを熱愛していたことはよく知られているが、この頃には彼女に対するそうした感情は友情に近い愛に変わり、恋心はユーリエに向けられるようになっていたのだ。
しかし彼はその想いを告白できないままでいた。ユーリエもブラームスの心情を知ることなく、この1869年の夏、イタリアの伯爵と婚約する。衝撃を受けたブラームスは、失恋の感情を込めてアルト独唱と男声合唱と管弦楽による「アルト・ラプソディ」を短期間で書き上げる。彼自身「伯爵夫人のために花嫁の歌を書いた。それは恨みと怒りで作曲された」と述べているように、暗い響きのうちに自らの苦悩を吐露した作品である。
 用いられたゲーテの詩は、この文豪が厭世的な青年プレッシングとともにハルツ山に旅した際に書いた詩「冬のハルツの旅」の一部で、絶望の淵にある孤独な若者の苦悩と救いへの祈りを表したその内容に、ブラームスは自身の心情を重ねたのである。曲は詩に応じて3部分から構成されている。
 第1部(アダージョ)は、暗く重苦しい響きの管弦楽と朗唱風のアルト独唱が荒涼たる山と絶望した若者の心を映し出す。第2部(ポーコ・アンダンテ)は、若者の人間憎悪の気持ちと自分の価値への疑いについて、独唱が情感のこもった旋律で歌い進める。そして長調に転じる第3部(アダージョ)では男声合唱が加わって独唱とともに若者を勇気付けるよう神に願いながら、祈りの気分を高めていく。
 
●作曲年代 1869年
●初  演
1870年3月3日 イェーナ、独唱ヴィアルド・ガルシア、指揮エルンスト・ナウマン
●楽器編成
フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2、弦5部、アルト独唱、男声合唱
 
 
 
 
ローベルト・シューマン(1810-1856)
交響曲第3番 変ホ長調 作品97 「ライン」
 
 ローベルト・シューマン(1810-56)は1850年9月にデュッセルドルフ市の音楽監督に就任した。精神的な病を抱えていた彼は、当初音楽監督を引き受けることにためらいもあったようだが、地位に就いてからは意欲的に仕事に取り組み、ライン河沿いのこの都市での新しい生活は彼の創作意欲もおおいに刺激することとなる。
 特に着任して程なくすぐ南のケルンを訪れたことは彼に新たな創作の霊感をもたらした。この時の印象が直接のきっかけとなって、彼は11月初めから1カ月あまりのうちに新しい交響曲を書き上げる。それが交響曲第3番で、彼自身「ライン地方の生活の情景」と呼び、「民衆的な要素に支配されている」とも述べているように、ライン地方と深く関わった作品だ。しかしラインの情景を描写的に扱ったものではなく、ライン地方での新しい生活に喜びを見出した当時の彼の心を表現した作品というべきだろう。全体は5楽章構成。当初は通常の4楽章構成の交響曲として書き進められたようだが、ほぼ全体が出来上がりつつあった頃、シューマンはケルンのドームで大司教ガイセルの枢機卿昇任式が執り行われたことを聞き、厳粛な儀式を思わせる間奏風の音楽を書いて第4楽章として追加したという。

 
第1楽章 生き生きと、変ホ長調 力感溢れる第1主題で開始されるソナタ形式楽章。ト短調で出る第2主題が幾分メランコリックな気分を醸し出すものの、全体は勢いに満ちて運ばれていく。

第2楽章 スケルツォ、とても中庸に、ハ長調 スケルツォと表記されているが、性格的にはレントラー(18世紀後期から19世紀前期にかけてオーストリアや南ドイツで踊られた民俗的舞曲)に近く、その点に上記のシューマンの言う民衆的な要素が窺える。しかしその旋律にロマン的詩情の漂うところが彼らしい。
 
第3楽章 急がずに、変イ長調 穏やかさのうちにロマン的な憧憬の気分を湛えた楽章。クラリネットとファゴットによる主要主題は、付点リズムと跳躍進行の多い起伏に富んだ旋律ながらも牧歌的な叙情に満ちている。続いてヴァイオリンに出る軽やかで幸福そうな楽想は以後この楽章を通じて執拗に出現する。中間に出る副主題はファゴットとヴィオラによるなだらかなもの。
 
第4楽章 荘厳に、変ホ短調(調号は変ホ長調) すでに触れたようにケルンの大聖堂で行われた大司教の枢機卿叙任式に関連する緩徐楽章。シューマン自身自筆譜に「荘厳な儀式の性格で」と記しており、コラール風の厳粛な主題をはじめ荘重な趣が支配する。前の楽章までは用いられなかったトロンボーンの厳かな響きが効果的に生かされている。
 
第5楽章 生き生きと、変ホ長調 明るい躍動感に溢れるソナタ形式のフィナーレ。シューマンの述べる民衆的な喜ばしさを感じさせる楽章だが、リズム的には錯綜した箇所が多いのが彼らしい。展開部ではホルンに出る新しい楽想が高揚感をもたらす。コーダでは第4楽章の厳粛な主題が壮麗で明るい性格のものに変容されて出現し、頂点を作り上げる。
 
●作曲年代 1850年
●初  演 1851年2月6日 デュッセルドルフ、指揮は作曲者自身
●楽器編成
フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、ティンパニ、弦5部
 
 
 
 
曲目解説:(C) 寺西基之(音楽評論家)(無断転載を禁じる)
 
歌詞対訳:(C) 三ヶ尻 正無断転載を禁じる)
 
 
 
 
 
 
 
 
                                     
 
 
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