大阪交響楽団 2017年度いずみホール定期演奏会 曲目解説

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第29回 いずみホール定期演奏会 7月5日(水)
外山 雄三

第29回いずみホール定期演奏会
ベートーヴェン・夏
-ベートーヴェン没後190年-
 
2017年7月5日(水)
<昼の部>14時30分開演 <夜の部>19時00分開演
いずみホール
 
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)
交響曲 第6番 ヘ長調 作品68 「田園」


  ベートーヴェンの交響曲第6番「田園」は、ベートーヴェン自身が指揮、演奏した演奏会で、交響曲第5番「運命」などと一緒に初演された、中期を代表する作品の一つです。作曲は、本格的には1808年の春ころから始まり、夏にはほぼ完成していたとみられています。
  よく知られているとおり、音楽は「田園」生活の情景や感情を描くものです。自筆原稿には、比較的詳しい標題が付いていました。まず曲の全体は「田園=交響曲、あるいは田舎の生活の思い出(音画というよりも、むしろその感情の表現)」というタイトルを持ち、以下各楽章には次のような言葉が付されていました。

1. 「田舎に着いた時に人の心に目覚める、心地よく晴ればれした感情」
2. 「小川のほとりの情景」
3. 「田舎の人々の楽しい集まり」
4. 「雷。嵐」
5. 「牧人の歌。嵐の後の慈しみに満ちた神への感謝と結びついた気持ち」
 
 この種の「田園」的交響曲は、ベートーヴェンの独創というわけではなくて、当時多くの作曲家がこの類いの音楽を書いたようです。そもそも羊飼い、牛飼いといった牧人を理想化してそこに詩的想念をこめる、ということ自体は、ギリシア・ローマの時代から行われてきたもので、ルネサンス期の「牧歌劇(パストラル・ドラマ)」のような例もあります。このような伝統を「交響曲」と結びつけたのがベートーヴェンの時代の特徴でした。
  よく引き合いに出されるのは、ユスティーン・ハインリヒ・クネヒトという作曲家の交響曲『自然の音楽的描写』という曲ですが、こういった作品を聴いてみると、ベートーヴェンの工夫もはっきりしてきます。この交響曲第6番は a )自然の描写を行う音楽であった、という点と、b)しかも交響曲としての枠組みを踏まえている、という2点を特徴とし、現代の我々は主に a の方に注意を向けがちですが、当時の人々からすればむしろ a でありながら b の面を備えていることこそが際立っていたのであり、その点にベートーヴェンの野心があったのではないか、と思われます。5楽章から成る全体も、自然描写的な面を一旦外してみると、アレグロのソナタ形式の冒頭楽章、緩徐楽章、スケルツォに相当する舞曲の音楽、(そして第4楽章がはさまって)、ロンド形式のフィナーレとなって、古典派の交響曲の標準型をほぼ踏まえているのです。
  音楽によって、上述のような自然描写を追っていくことは、もちろんとても楽しいものですが、同時にそれが、主題や動機のレベルでの様々な音楽的関連が作り出す呼吸を少しも妨げていない点にも注目すべきでしょう。第2楽章で小川の流れを表している16分音符の細かい伴奏音型が、そのちょっとしたさざなみや渦巻きのような動きを保ちながら、どれほど活きいきと旋律を彩ってゆくか、あるいは第5楽章で嵐が過ぎて晴れ間が戻ってくる気持ちと、音楽が再びヘ長調へと回帰した時の安らぎとどれほど見事に調和しているか
ーー ベートーヴェンの見事な手腕が見て取れます。

作曲年代  1808年
初  演
 1808年12月22日。作曲者自身の指揮。アン・デア・ヴィーン劇場
楽器編成
ピッコロ、フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2、トランペット2、トロンボーン2、
ティンパニ、弦五部

 
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)
交響曲 第7番 イ長調 作品92
 
 交響曲第7番の作曲は、先の交響曲第6番が完成してから約3年後、1811年夏から始まり、翌年の春に完成しています。第5番と第6番が、かなり極端な性格の対照を成す、双子的な作品であったのに対して、この第7番は編成の点では第4番以前の枠に戻り、よりバランスのとれた作品となりました。初演は、1813年末の慈善演奏会で、作曲者自身の指揮によって行われています。この演奏会では、ナポレオン軍を破ったイギリスの将軍を描いた『ウェリントンの勝利』初演が熱狂的に迎えられ、交響曲第7番自体も好評を得て、ベートーヴェンは一躍国民的な作曲家としての地位を確立します。この交響曲の親しみやすさが、民衆の熱狂に拍車をかけた、と見るべきでしょう。
  曲は4つの楽章から成ります。第1楽章は、大規模な序奏を伴うヴィヴァーチェのソナタ形式。序奏は、二つの動機を持つ本格的なものですが、このうちの二つ目の動機で用いられたリズム型が変化して主部8分の6拍子の付点リズムへとなだれ込みます。ヴァグナーが「舞踏の聖 化(アポテオーゼ)」(Apotheoseとは人が神になること、神格化というような意味です)と呼んだ、この作品でまず最初に現れる舞曲のリズムです。そしてこの舞曲は次第に高まって見事なクライマックスを形作りますが、これがハイドンと変わらない編成のオーケストラから生み出されていることには、改めて驚かされます。
  第2楽章は一転してイ短調のアレグレット。大きくは ABA’ の3部分形式ですが、 A は印象的な主題を変奏してゆく形になっていて、 A’ の部分ではフーガ的な変奏も現れます。 B では伸びやかなイ長調の旋律が現れます。
  第3楽章は急速なスケルツォの楽章。通例通りスケルツォの後にトリオが来ますが、2度トリオが挟まって、3度目が来るのかと思わせておいて一転して締めくくりの和音で終わります。全曲が舞曲のリズムに満ちているこの交響曲では、第3楽章はその機知(スケルツォ部分)と、のどかさ(トリオ部分)で際立っているようです。
  そして第4楽章は再びアレグロのソナタ形式。主題は、同じ頃ベートーヴェンが編曲していたアイルランド民謡の一つに似ていますが、この楽章では、それはむしろバッカス的な狂騒へと変質していると言えるでしょう。
 
作曲年代  1811年〜12年
初  演
 1813年4月21日。作曲者自身の指揮。ルドルフ大公の邸宅
楽器編成
 フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2、トランペット2、ティンパニ、弦五部
 

            

        (C)伊東信宏(音楽学)(無断転載を禁じる)
 

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