大阪交響楽団 2017年度 定期演奏会 曲目解説

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第210回 定期演奏会   5月18日(木)
オーラ・ルードナー
ファブリス・ミリシェー


2017年5月18日(木)19時00分開演 


ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)
バレエ音楽「プロメテウスの創造物」序曲 作品43

  ケルン選帝候の宮廷歌手の子息として、ボンで生まれたベートーヴェンは、父親や宮廷オルガニストのネーフェから音楽の手ほどきを受け、やがて宮廷楽団のヴィオラ奏者を務めるようになる。1792年11月には、ウィーンへと移り住み、ハイドンに作曲を師事し、当初はピアニストとして注目されるようになった。
  1799年から1800年にかけて作曲した七重奏曲(作品20)が人気を集め、1800年4月2日には交響曲第1番(作品21)がウィーンで初演されるなど、新進作曲家として認められつつあったベートーヴェンは、同じ年に、作曲家ボッケリーニの甥で、宮廷劇場のマイスターであったサルヴァトーレ・ヴィガーノから、ギリシャ神話を題材にしたバレエ音楽を委嘱され、〈序曲〉、「テンペスタ(嵐)」と題された〈導入の音楽〉と16のナンバーを書き下ろした。
  このバレエの初演は、大成功を収め、1801/02年シーズンの内に20回以上演奏されるほど好評を博したが、その振付の詳細に関しては、失われてしまい、残っていない。ヴィガーノが書いたバレエの台本の筋書きは、ギリシャ神話をモティーフとしながら、当時の啓蒙主義の理念のもと、プロメテウスは、芸術や知識によって人類を高める使命を背負った存在として扱われている。なお、第16曲〈フィナーレ〉のテーマは、交響曲第3番「英雄」(作品55)で、変奏曲形式の終楽章の主題に転用されたことでも知られている。現在では、バレエの全曲が演奏される機会は稀であるが、その〈序曲〉は、コンサートの演目として、しばしば取り上げられる人気曲である。
  〈序曲〉は、16小節の序奏(アダージョ)でスタートし、ハ長調でありながら、この時代としては、大胆な和声が盛り込まれている。2分の2拍子による主部(アレグロ・モルト・コン・ブリオ)に入ると、溌剌とした響きがみなぎってくる。展開部を簡略化したソナタ形式に拠り、再現部を経て、力強い響きで閉じられる。

 
●作曲年代  1800-1801年
●初  演
 1801年3月28日 ウィーンのホーフブルク劇場で初演
●楽器編成
 フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2、トランペット2、ティンパニ、弦五部


ニーノ・ロータ(1911-1979)
トロンボーン協奏曲


  イタリアのミラノで生まれたニーノ・ロータの名は、『ロミオとジュリエット』や『ゴッドファーザー』といった映画音楽の作曲者として著名であり、後者の〈愛のテーマ〉は、日本でも、尾崎紀世彦による歌唱でヒット・チャートに登場したほどである。もっとも、ミラノ音楽院やローマの聖チェチーリア音楽院で研鑽を積み、アメリカのカーティス音楽院で学んだロータ本人は、「自分はクラシック音楽の作曲家であり、映画音楽は余技に過ぎない」と語っていたことが知られている。10代の頃から、オラトリオや歌劇を作曲するなど、早くから才能を発揮していたロータは、1942年に初めて映画音楽を作曲し、1951年に映画監督のフェデリコ・フェリーニと出会い、以後、亡くなるまで彼の作品の音楽を担当した。その間にも、交響曲やピアノ協奏曲など、数々のコンサート用の作品を作曲している。
  1966年に作曲されたトロンボーン協奏曲は、協奏曲としては、もっとも一般的な3楽章構成を採り、近年は、多くのトロンボーン奏者がレパートリーに入れている人気作。金管楽器はホルンのみを用いるなど、ソロをマスクしないようにオーケストレーションされている。
  ソナタ形式に準拠した短い第1楽章(アレグロ・ジュスト、4分の2拍子)は、トロンボーンのソロでスタートし、プロコフィエフ風のモダニズムに満ちている。楽曲中、もっとも長い第2楽章(レント,ベン・リトマート、4分4拍子)は、「十分にリズムをとって」と指示されているように、付点8分音符+32分音符×2というリズム・パターンにのって、トロンボーンが深々とした調べを吹奏する。荘厳な響きにも満ち、時に孤独なセレナードといった趣きの音楽になっている。第3楽章(アレグロ・モデラート、4分の2拍子)は、ロッシーニ風の祝祭感に富んだフィナーレで、中間部のソロ・パートには、3連符主体のパッセージも盛り込まれている。フェリーニの映画に付けた音楽のように、喧噪感に満ちてはいるが、陽気さだけではなく、人生の哀感が背中合わせになっているのが印象的である。

 
●作曲年代  1966年
●初  演
 
1969年5月6日 ミラノのミラノ音楽院大ホールで初演
トロンボーン独奏はブルーノ・フェラーリ、フランコ・カラッチオーロ指揮イ・ポメリッジ・ムジカーリ
●楽器編成
 独奏トロンボーン、フルート、オーボエ、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2、ティンパニ、弦五部


ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(1840-1893)
交響曲第1番 ト短調 作品13 「冬の日の幻想」


  鉱山技師の子息として生まれたチャイコフスキーは、法律学校を卒業して法務省に勤務した後、音楽への情熱を抑えることができずに、1862年に創設されたペテルブルク音楽院に入学した経歴の持ち主である。翌63年には、法務省に辞表を出し、アントン・ルビンシテインから音楽理論の教えを受けた。1865年末に優秀な成績で卒業したチャイコフスキーは、翌66年から、新たに創設されたモスクワ音楽院(院長はアントンの弟ニコライ・ルビンシテイン)で教鞭を執りつつ、交響曲第1番《冬の日の幻想》から第3番《ポーランド》に至る交響曲を完成させている。チャイコフスキーの恩師であったA.ルビンシテインは、交響曲に関しては、ベートーヴェンとシューマンを高く評価しており、チャイコフスキーは、その両者をモデルにしながら、ロシア音楽の開祖であるグリンカやロシア民謡を素材に交響曲を形づくることになる。
  交響曲第1番は、1866年3月頃に本格的に着手し、同年夏には第1稿が完成。ペテルブルク時代の師匠であるA.ルビンシテインは、その第1稿を評価せず、チャイコフスキーが助言に従って一部に修正を加えても、その意見を変えなかった。それに対して、勤務先の上司であるN.ルビンシテインは高く評価し、12月に第3楽章を部分初演し、1868年には全曲の初演を指揮している。この交響曲第1番が、N.ルビンシテインに献呈されているのは、そのためである。
  楽曲は、チャイコフスキーらしい旋律美にあふれ、効果的なオーケストレーションに彩られている。また、民謡の旋律を用いたり、第3楽章の中間部に作曲者が好んだワルツ風の音楽が出現するなど、最初に完成した交響曲でありながら、早くもチャイコフスキーの個性が至るところに刻印されている。また、全曲初演の際に成功を収めた交響曲第1番の出来映えに、後年に至るまで自信を抱いていたことが知られている。
  ただし、チャイコフスキーは、当初の版には満足せず、1875年にユルゲンソンから総譜を出版する際に改訂の手を入れ、この改訂版は、1883年に初演が行われた。もっとも、この版にも、多くの誤植があり、それらを訂正した上で、デュナーミクやフレージングの変更など、数々の修正を反映した版が1888年に出版され、現在では、その形で演奏されるのが一般的である。作曲者自身が付けた副題は、日本語では、「冬の日の幻想」が一般的である。原題のロシア語は、‘3имние гре₃ы’であり、「冬の夢想」という意味である。この副題に関しては、自然主義的な冬の描写や音楽化を目指したものではなく、当時のロシアの芸術家の間で流行っていた「冬の旅」という主題に由来するものと考えられている。作曲者自身は、この副題および第1・2楽章の標題に関しては、なにも説明を残していない。
  第1楽章:「冬の旅の幻想」アレグロ・トランクィロ ト短調 4分の2拍子 ソナタ形式 楽章冒頭で、フルートとファゴットが、凍てついたイメージを喚起する第1主題を提示。第2主題は、ニ長調に転じて、クラリネットが人懐っこい表情の第2主題を提示する。展開部では、主に第1主題が扱われ、再現部に入る前にはホルンが効果的に用いられている。結尾部は静かに閉じられる。
  第2楽章:「憂鬱な土地、霧深き土地」アダージョ・カンタービレ・マ・ノン・タント 変ホ長調 4分の4拍子 ロンド形式 哀愁を帯びた旋律が切々と歌われる。いくつかの旋律には、1864年に作曲し、没後に出版された序曲《雷雨》の素材が転用されている。
  第3楽章:アレグロ・スケルツァンド・ジョコーソ ハ短調 8分の3拍子 三部形式のスケルツォ 主部は、音楽院時代に作曲したピアノ・ソナタ(嬰ハ短調)の一部を、移調してオーケストレーションしたもの。中間部はワルツ調になっている。
  第4楽章:アンダンテ・ルグーブレ ト短調 4分の4拍子 ―アレグロ・マエストーソ ト長調 2分の2拍子 ソナタ形式 ファゴットが出す動機に基づきヴァイオリンが奏でる序奏の主題は、カザン地方の民謡「咲け、小さな花」に基づいている。主部に入ると、その旋律を長調で提示し、主要主題として用いている。対位法が活用された箇所を経て、大いなる熱狂へと至り、力強いコーダでは打楽器が連打され、壮麗に結ばれる。

 
●作曲年代  1866年(1874年改訂)
●初  演
 <第3楽章のみの部分初演>
1866年12月10日(西暦は22日) モスクワで初演 ニコライ・ルビンシテイン指揮 ロシア音楽協会演奏会
<初演稿の全曲初演>
1868年2月3日(西暦は15日) モスクワで初演 ニコライ・ルビンシテイン指揮 ロシア音楽協会演奏会
<改訂稿の全曲初演>
1883年11月19日(西暦は12月1日) モスクワで初演 マックス・エルドマンズデルファー指揮 ロシア音楽協会演奏会
●楽器編成
ピッコロ、フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、
テューバ、ティンパニ、シンバル、大太鼓、弦五部

 
(C) 満津岡 信育(音楽評論家) (無断転載を禁じる)


 
 
 
 
 
 
                                     
 
 
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