大阪交響楽団 いずみホール定期演奏会 曲目解説

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第25回 いずみホール定期演奏会 9月21日(水)
佐藤 俊太郎
黒川 侑

2016年9月21日(水)
<昼の部>14時30分開演 <夜の部>19時00分開演
いずみホール
 
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)
ディヴェルティメント ニ長調  K.136 (125a)


  ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756~1791)はザルツブルク生まれ。幼少のころから父レオポルトと同じく、ザルツブルク大司教の宮廷音楽家として活動した。父は彼に新しい音楽に触れさせ、多彩な音楽様式を学ばせるため、ロンドンやパリ、イタリアなどを親子で旅行した。
  《ディヴェルティメント》K.136は1772年、モーツァルトが16歳で書き上げた作品で、父とともに訪れたイタリアの諸都市からザルツブルクへ戻った時期の創作である。今日では、弦楽合奏で演奏される機会がほとんどであるが、本来は4つのパートそれぞれ1名ずつによる四重奏のための作品と推測される。当時の演奏慣習では、弦楽四重奏を弦楽合奏で行なうこともあり、演奏形態については特定できない。
  ディヴェルティメントは、日本語では「嬉遊曲」と訳されることもあり、その多くは夜会などの場で演奏された。明朗で軽やかな楽想が特徴で、特に楽章数や楽器編成の定型はないが、一般的には楽章数は多い。18世紀後半に盛んに作曲され、ヨーゼフ・ハイドンはこのジャンルを数多く手掛けている。モーツァルトのこの作品は3楽章構成で、第1楽章と第3楽章はソナタ形式、そして第2楽章も簡素なソナタ形式である。また、ディヴェルティメントやセレナーデの定番となっているメヌエット楽章は含まれていないことから、夜会目的の作品ではなかった可能性も考えられる。

  第1楽章/アレグロ ニ長調。第1ヴァイオリンによる明るく清々しい主題は、この楽章を特徴づけている。

  第2楽章/アンダンテ ト長調。典雅な趣の緩徐楽章。第1楽章の第1主題の動機が取り入れられており、楽章間の結びつきが意図されている。

  第3楽章/プレスト ニ長調。第1主題では、第1楽章の冒頭の主題が形を変えて現れる。展開部では、対位法的な書法もみられる。
 
●作曲年代  1772年
●初  演
 不明
●楽器編成
 弦五部
ヴァイオリン2部、ヴィオラ、バス(この作品では、ヴィオラが「ヴィオレ」と複数形で記され、低弦楽器における「バッソ」の表記にはコントラバスが含まれていたかどうかが明らかではないなど、楽器編成ははっきりとしていない)


フェリックス・メンデルスゾーン(1809-1847)
ヴァイオリン協奏曲  ホ短調  作品64

  フェリックス・メンデルスゾーン(1809~47)は、ハンブルクのユダヤ系ドイツ人の家庭に生まれた。彼の祖父モーゼス・メンデルスゾーンはカントに強い影響を与えた高名な哲学者である。17歳で《真夏の夜の夢》序曲を作曲し、20歳でバッハ《マタイ受難曲》初演から100年目を記念する演奏会でこの曲を指揮、また1835年には名門ゲヴァントハウス管弦楽団の指揮者に就くなど、早くから音楽家としての名声を博した。
  メンデルスゾーンが《ヴァイオリン協奏曲》作品64の構想を初めてもったのは、1838年である。ゲヴァントハウス管弦楽団のコンサート・マスター、フェルディナント・ダーフィットにこの曲の創作上のアドヴァイスを受けていたものの、創作の筆は遅々として進まず、完成したのは構想を始めてから6年後のことである。
  《ヴァイオリン協奏曲》作品64の初演では、メンデルスゾーンが指揮台に立つことになっていた。しかし、この作曲期間の後半に体調を崩し、フランクフルトで静養を余儀なくされる。1845年のライプツィヒでの初演では、独奏ヴァイオリンにはダーフィット、そしてゲヴァントハウス管弦楽団の副指揮者ニルス・ゲーゼが指揮を務めた。
  この協奏曲には、革新的な試みがいくつか見られる。例えば、第1楽章ではオーケストラによる長い前奏を排除し、独奏ヴァイオリンが短い序奏をともなって第1主題を提示する点は非常に画期的で、のちに大きな影響を与えた。また、展開部から再現部の間にカデンツをはさむほか、3つの楽章がアタッカで連続して演奏されるなど、これまでの協奏曲とは異なる斬新な手法が取り入れられている。

  第1楽章/アレグロ・モルト・アッパッショナート ホ短調 2分の2拍子。波打つような弦楽器の序奏に導かれ、独奏ヴァイオリンは抒情的な第1主題を歌い上げる。ソナタ形式に基づいており、第2主題はト長調で平安に満ちた表情。

  第2楽章/アンダンテ ハ長調 8分の6拍子。第1楽章の終わりから途切れることなく鳴り響くファゴットの調べとともに、音楽は始まる。その後、独奏ヴァイオリンが奏でる優美な主旋律は、この楽章の最大の魅力。三部形式に則っている。

  第3楽章/アレグレット・ノン・トロッポ ホ短調 4分の4拍子 ~ アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェ ホ長調。序奏(ホ短調)では、第2楽章の中間部の動機が用いられており、楽章間の連続性が意図されている。ホ長調のソナタ主部は、メンデルスゾーンらしく軽快で清々しい主題に始まる。
 
●作曲年代  1844年9月16日完成
●初  演
 
1845年3月13日、ライプツィヒ、ニルス・ゲーゼ指揮、フェルディナント・ダーフィット独奏
●楽器編成
 独奏ヴァイオリン、フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2、トランペット2、
ティンパニ、弦五部


 

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)
交響曲  第5番  ハ短調  作品67  「運命」


  ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770~1827)は、ライン河岸のボンに生まれ育った。1792年、ロンドンからの帰途に当地に立ち寄ったヨーゼフ・ハイドンに認められ、その年のうちにウィーンへ移住する。彼が本格的に作曲を手掛けるようになったのは、ウィーン移住後であり、ハイドンやアルブレヒツベルガー、そしてサリエリらに作曲を学びながら、ピアノを演奏し、貴族の子弟らにピアノを教えるなどしていた。しかし、最初の交響曲を手掛けた1800年の少し前ごろから難聴に悩まされるようになり、1802年には二人の弟へ遺書を宛てた。その後、精神の危機を乗り越えた彼は、壮大なスケールの中期様式へと創作スタイルを変え、彼の個性を大きく開花させてゆく。ドラマティックで緊張感に満ちた楽曲構成をもつこの交響曲は、彼の個性を最も刻印した作品と言えよう。
  なお、《交響曲 第5番》の第1楽章冒頭の有名な動機について、ベートーヴェンの弟子であるシントラーは、その著書の中で「運命の扉はこのように叩く」と作曲家が述べたと記しているが、このエピソードについてはシントラーの作り話と考えられている。
この交響曲は、上述のように第1楽章冒頭の基礎動機が作品全体を構築しており、一つの動機による全楽章の統一的な展開という意味で、古典派のソナタ形式の究極的な形を示している。またこの曲は、ハ短調の第1楽章に始まり、終楽章をハ長調で結ぶ。このように、短調の同主長調で締めくくる調の構成は、「苦悩から歓喜へ」と形容される彼の創作意思をよく示しており、彼の《交響曲 第9番》をはじめ、ブラームス《交響曲 第1番》やチャイコフスキーの第4番や第5番の交響曲、さらにはショスタコーヴィチの第5番の交響曲へと継承された。またフィナーレでは、ピッコロ、コントラファゴット、そしてトロンボーンが用いられている。これらの楽器の使用は、のちの交響曲の楽器編成や表現の点で画期的である。
  1808年12月12日にアン・デア・ウィーン劇場で行なわれたこの作品の初演では、《交響曲 第6番》や《合唱幻想曲》(《交響曲 第9番》第4楽章の原型)も同時に初演された。とりわけ、徹底的な動機労作を主軸とした《交響曲第5番》と、標題交響曲で5楽章からなる《交響曲 第6番》…すなわち、古典派の様式の総括とロマン派の先駆けをなす2作品が同日に初演されたことの意義は大きい。

  第1楽章/アレグロ・コン・ブリオ ハ短調 4分の2拍子。第1主題に含まれる基礎動機を中心に、作品全体が構築されている。ソナタ形式で書かれており、第1主題では三度音程の動機と、同音連打によるリズム動機が大きな役割を担う。第1ヴァイオリンの奏でる第2主題は、第1主題とは対照的に穏やかな表情であるが、その背後で運命の動機が鳴り響く。

  第2楽章/アンダンテ・コン・モート 変イ長調 8分の3拍子。付点のリズムを含む優雅な趣の主題ののち、3つの変奏が続く。

  第3楽章/アレグロ ハ短調 4分の3拍子。低弦楽器による不気味な動機に始まり、ホルンが運命の動機(基礎動機)を鳴り響かせる。コーダにおける第2ヴァイオリンとヴィオラの奏でる長大な保続音は、続くフィナーレへの序奏にもなっている。

  第4楽章/アレグロ ハ長調 4分の4拍子。前の楽章から途切れることなく、音楽は流れてゆく。やがて、ハ短調からハ長調へと転調して、勇壮な凱歌がこの作品を高らかに締めくくる。
 
●作曲年代 1807~08年
●初  演
 
1808年12月22日、ウィーン、作曲者の指揮による
●楽器編成
 フルート2、ピッコロ、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、コントラファゴット、ホルン2、
トランペット2、トロンボーン3、ティンパニ、弦五部



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