大阪交響楽団 曲目解説 名曲コンサート 2016年度

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2016年度 名曲コンサート 曲目解説

 
 
第92回名曲コンサート   8月27日(土)
外山 雄三
松田 華音

 
ロシア・ロマン派音楽の系譜
 
2016年8月27日(土)
昼の部 13時30分/夜の部 17時00分 開演
 


曲目解説 / 石戸谷 結子(音楽評論家)
 
ミハイル・イヴァノヴィッチ・グリンカ(1804-1857)
歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲


グリンカはロシア・オペラの伝統を創りあげた人で、ロシア・オペラの父といわれる作曲家。1836年に作曲された「イワン・スサーニン(皇帝に捧げし命)」は、ロシア人の台本による、ロシア語の最初のオペラとなった作品で、それに続き1842年に2作目の「ルスランとリュドミラ」が完成した。初演は同年12月9日にサンクトペテルブルグのボリショイ・カーメンニイ劇場で行われた。原作は1820年にロシアの文豪、プーシキンによって書かれた戯曲で、この作品は「5幕の魔法オペラ」と表記されている。魔法使いや魔女が活躍する幻想的なおとぎ話で、キエフ大公の娘リュドミラが婚礼の日に魔法使いに誘拐され、婚約者のルスランが苦難の果てに救出してハッピーエンドを迎えるという内容。音楽はペルシャやロシアの民謡風の旋律がふんだんに使われ、大合唱団が活躍してエキゾチックな魅力に溢れている。現在ではロシア以外ではオペラ全曲が上演される機会は少ないが、軽快で華麗な序曲は、単独にコンサートなどで盛んに演奏されている。この序曲には2幕で騎士のルスラン(バリトン)が歌う勇壮なアリア「雷神よ、腕にかなう鋼の刀を我に与えよ」と5幕の華やかなフィナーレの合唱「偉大な神々に栄えあれ!」の旋律が織り込まれており、軽やかなテンポと勇壮なスケールを持つ色彩豊かな曲として親しまれている。
 
 
作曲年代/  1837-1842年
 初  演/
 
1842年12月9日 
サンクトペテルブルグのボリショイ・カーメンニイ劇場
 楽器編成/
 
フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、コントラ・ファゴット、ホルン4、トランペット2、
トロンボーン3、ティンパニ、弦五部


セルゲイ・ラフマニノフ(1873-1943)
ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 作品18


ラフマニノフはロシアの風土に根差したロマン的作風で一世を風靡した作曲家。貴族階級の生まれということもあり、1917年10月のロシア革命の後には祖国を離れてヨーロッパに移り住み、1918年からはアメリカに移住。同地で波乱に満ちた生涯を終えた。このピアノ協奏曲第2番は、高度なピアノ技法が散りばめられた華麗な曲で、初演の時から大成功を収め、ラフマニノフの名を一挙に知らしめることになった。数あるピアノ協奏曲のなかでも格別な人気を誇る名曲だが、ピアノの名手でもあったラフマニノフの名人芸がいかんなく発揮されるよう書かれており、難曲としても知られている。ラフマニノフが最初にこの曲に着手したのは1899年25歳の時だった。この頃彼は深刻な神経症に陥っていたといわれる。そのせいで曲はなかなか進まなかったが、1900年になって暗示療法の治療を受け快方に向かった。1901年の春には曲が完成し、同年10月に作曲者自身のピアノで初演された。
第1楽章 モデラート ソナタ形式/重々しい鐘の音を思わせるピアノで曲が開始され、管弦楽と融合して大河の流れのような重厚な第1主題を奏でる。続く第2主題もピアノが主導して甘美でロマン的な旋律を響かせる。第2楽章 アダージョ・ソステヌート 3部形式/ピアノの3連音がゆったりとやるせない思いを奏でる緩徐楽章。オーケストラの旋律にのり、ピアノがメランコリックな旋律を発展させていく。中間部にピアノのカデンツァ部分がある。第3楽章 アレグロ・スケルツァンド/力強い管弦楽が、ピアノのグリッサンドに受け継がれ、華麗なテクニックを披露。第2主題が優美な旋律を奏でる。2つの主題が対比され、最後はピアノが駆け上るようにクライマックスに到達し、華やかに曲を終える。
 
作曲年代/ 1899年頃-1901年
初  演/
 
1901年10月27日
ラフマニノフのピアノ、アレクサンドル・ジロティ指揮の      モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団 
楽器編成/
 
独奏ピアノ、フルート2、オーボエ2、クラリネット2、    ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、テューバ、ティンパニ、大太鼓、シンバル、弦五部


ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(1840-1893)
バレエ音楽「白鳥の湖」 “情景” “四羽の白鳥” “チャルダッシュ”

バレエ音楽の最高傑作といわれる「白鳥の湖」。チャイコフスキーがこの曲に取り掛かったきっかけは、モスクワのボリショイ劇場支配人からの依頼だった。数年前に妹の子供たちのために、ドイツの童話「奪われたヴェール」をもとにした短いバレエ曲を作っていたこともあり、依頼を引き受けて1875年から作曲を始める。そのバレエ曲を発展させ、作曲家と数人が協力して台本を制作し、4幕の「白鳥の湖」の物語を創りあげた。曲は翌年の4月に完成し、1877年2月20日にモスクワのボリショイ劇場で初演された。しかし、振り付けや踊り手などさまざまな要因がからんで公演は失敗に終わり、間もなく劇場のレパートリーから外されてしまった。現在のような人気を得たのは、作曲者の死後、その追悼としてサンクトペテルブルグのマリインスキー劇場で蘇演されたことがきっかけだった。有名な振付家のマリウス・プティパが中心になり、台本や音楽を一部改訂し、弟子のレフ・イワノフとともに新たに振り付けして1895年に全幕が上演された。この18年ぶりの蘇演は大成功を収め、以後バレエ音楽の不朽の名作として親しまれている。
ストーリーは王子と魔法使いに白鳥にされた王女の悲恋物語だが、結末がハッピーエンドで終わる版もある。今回演奏されるのは、全曲から名曲を抜粋した演奏会用組曲からの3曲。「情景」は第2幕の冒頭で演奏され、ハープのアルペッジョと弦のトレモロが神秘的な湖を描写する。オーボエがこの曲のテーマというべき旋律を奏で、悲劇的な愛を予感させる。「四羽の白鳥の踊り」は2幕の「白鳥たちの踊り」のなかの1曲。4羽の白鳥が手を組んで踊る軽妙な曲で、ファゴットとオーボエが活躍する。「チャルダッシュ」は第3幕で演奏される「ハンガリーの踊り」で、最初はゆったりした哀愁を帯びた部分から始まり、途中からテンポの速い曲に移る。(チャルダッシュはハンガリーの民族舞踊)。
 
作曲年代/ 1875-1876年
初  演/
 
1877年2月20日 モスクワのボリショイ劇場で初演
改訂版は1895年1月27日 
サンクトペテルブルグの
マリインスキー劇場
楽器編成/
 
ピッコロ、フルート2、オーボエ2、クラリネット2、
ファゴット2、ホルン4、コルネット2、トランペット2、
トロンボーン3、テューバ、ティンパニ、打楽器、ハープ、
弦五部



アラム・イリイチ・ハチャトゥリアン(1903-1978)
バレエ音楽「ガイーヌ」 “剣の舞” “子守歌” “レスギンカ”


ハチャトゥリアンは、南コーカサスのグルジア(ジョージア)出身のアルメニア人。グルジアはトルコやアルメニア、アゼルバイジャンなどの国と隣接し、古来多くの民族が行き交う交通の要衝であり、独特の文化や民族音楽が生まれた土地であった。ハチャトゥリアンはそんな風土に根ざした民族音楽を取り込み、強烈なリズムや色彩的な管弦楽、野生的で個性的な音楽を作曲した。この曲のあとに作曲された、男性的な踊りが特徴の「スパルタカス」は、ロシアのバレエ団によって上演される機会が多い。「ガイーヌ」(ロシア語ではガヤネー)は、1939年に上演されたバレエ「幸福」をもとに改作された作品。「幸福」は集団農場で働く男女の結婚の物語だが、1942年になって台本が大幅に変更されて新たなタイトル「ガイーヌ」として生まれ変わり、ペルミ(ウラル山脈の麓の都市。モロトフと呼ばれた時期もある)で初演された。その後1957年にボリショイ劇場でモスクワ初演が行われた際に、台本と音楽が改訂されている。従って「ガイーヌ」には3幕の原典版と4幕のモスクワ初演版がある。2つの版は集団農場で働くガイーヌが主人公という点は同じだが、ストーリーは異なる。ハチャトリアンは1942年の初演後、演奏会用の3つの組曲を編纂しており、今回演奏される3曲はその中から選ばれている。「剣の舞」は「ガイーヌ」の中で最もよく知られる曲。打楽器群による強烈なリズムで始まり、ホルンの印象的な響きが続き、男たちが出陣する様子が描写される。「子守歌」はガイーヌが子供に子守歌を聴かせる場面で演奏される。叙情的な旋律はアルメニア民謡から取られた。「レスギンカ」はコーカサス地方に住むレズギ族の民族舞踊で、速いテンポのリズミカルな踊り。華やかな色彩が交差し、勇ましく終わる。
 
作曲年代/
1939年(バレエ曲「幸福」として)
「ガイーヌ」は1941-1942年に作曲
 
 初   演/
942年12月9日ペルミ市で、キーロフ・バレエ団により
初演
改訂版は1957年5月 モスクワのボリショイ劇場
 楽器編成/
 
ピッコロ、フルート2、オーボエ2、イングリッシュホルン、クラリネット2、バス・クラリネット、ファゴット2、ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、テューバ、ティンパニ、シロフォン、打楽器、ハープ、チェレスタ、
弦五部
 

(C)石戸谷結子(音楽評論家)(無断転載を禁じる)
 
 
外山雄三写真 撮影:三浦興一
松田華音写真:(C)Ayako Yamamoto


 


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