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長島喜一郎コラム

 

クラシック・おもちゃ箱

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第2回 マーラー ヴェルター湖畔の別荘
2016-07-12
 グスタフ・マーラーは現在でこそ作曲家として知られていますが、存命中は、まず指揮者・歌劇場音楽監督で、不可思議な曲を書く人という認識でした。彼はウィーン音楽院で作曲を学び、サンクト・ペテルブルクやウィーンのコンクールに応募しましたが入賞はかないませんでした。そこで彼は地方で指揮の仕事を始め、断固たる意思と行動力で、ついにはウィーン宮廷歌劇場の監督に上りつめました。 
 
 それではいつ作曲していたかというと、シーズンオフにあたる6-8月でした。彼が夏を過ごした土地の中では、
1893-96年    アッター湖畔・シュタインバッハ (現オーストリア)
1900-07年    ヴェルター湖畔・マイヤーニック (現オーストリア)
1908-10年    南チロル・トプラッハ (現イタリア・ドビアッゴ)
の3つが特に有名です。
 
 これらの中では、ヴェルター湖畔・マイヤーニックが比較的行き安い場所にあります。イタリア国境に近いヴェルターゼー(湖)は風光明媚な避暑地として知られ、ブラームスやベルクもそこで夏を過ごしました。マイヤーニックはクラーゲンフルト駅(ウィーンから列車で約4時間)からバスで20分ほど。ここには湖水浴場があります。オーストリアには海がないので湖で泳ぎます。ですから海水浴場ではありません。バス停そばに山へ登っていく道があり、そこに「マーラー作曲小屋」の標識がありました。何もない山道を進み、本当に小屋があるのかと心配に成り始めた頃に、ようやく作曲小屋が見つかりました。現在でも回りには何もありません。深い森の中、木々に囲まれ静寂そのものです。マーラーは作曲にあたり、神経質に静けさを欲した人でした。小屋の窓からかすかに湖が見えます。マーラーは湖が見えるように木を切らせたけど、現在はもうできないねと管理人が話してくれました。彼はここで交響曲第4番から8番までを作曲しています。アルマ夫人の回想によれば、マーラーは朝6時に起きると女中に合図し、彼が作曲小屋へ着く前に、女中はマーラーが登る道とは別の歩きにくい道を通って朝食を小屋まで運んで準備し、また彼に姿を見られないように注意しながら元の道を退き返せねばならなかったそうです。その道かどうか分りませんが、道の痕跡も残っていました。1902年3月にマーラーと結婚したアルマは、その年の夏を彼と共にマイヤーニックですごしました。湖畔の家でピアノを弾いたところ作曲小屋まで聴こえてマーラーの邪魔になったので、作曲ほやほやの交響曲第5番を清書したと回想しています。
 
 湖畔の家は、バス停から湖沿いの道を西へ7-800m行ったところにあります。私有地なので、敷地内へ入ることはできません。マーラーが子供たちと水浴びをしたり、ボートに乗ったりした、2つのベランダの付いているという湖側の写真を取りたいものだと、バス停から来る途中にボート乗り場があったことを思い出し、そこでモーターボートを借りようと引き返しました。すると運悪くモーターボートは出払っていてないとのこと。でもこれはどうだと指差されたのは、何とバタバタボート。池によくあって、子供が乗りたがる足漕ぎタイプでした。さすがに白鳥は付いていませんでしたが、床が1枚なので水をかぶりそうだし、バタバタボートではと躊躇すると、こいつらに漕がせればいいとバイトのお兄ちゃん2人を貸してくれたので、行くことにしました。どこから来たの?ベルリンから。いま大学が夏休みで、アルバイトに来ているんだ。あの家は有名なの?マーラーの別荘だったのだよ。彼らはマーラーを知らないようでしたが、そんなことを話しているうちに、無事近くまで到着し、写真を取ることができました。暑い日だったので、これでビールを飲んでとチップをあげると、2人は喜んで受け取りました。苦心して撮影した写真をご堪能ください。
 
音楽ジャーナリスト 長島 喜一郎
「プログラム・マガジン」2016年7・8月号掲載
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