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長島喜一郎コラム

 

クラシック・おもちゃ箱

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第12回 リヒャルト・シュトラウスゆかりの3つの建物 
2018-07-06
 1864年6月11日、リヒャルト・シュトラウスはミュンヘンのアルトハイマー・エック Altheimer Eck 16番に生まれました。母はこの町を代表するビール製造会社プショアー家の娘で、生家はカールストーア(門)からマリーエンプラッツ(広場)を結ぶ町一番の繁華街ノイハウザー・シュトラーセにあったビール醸造所の裏手にあたります。父フランツは天才的なホルン奏者で、バイエルン宮廷歌劇場の首席奏者を長く務めました。彼はリヒャルト・ワーグナーの音楽を嫌っていましたが、シュトラウスが生まれた年に即位した国王ルートヴィヒ2世は熱狂的なワーグナー信奉者で、彼をミュンヘンに呼び寄せました。そのためフランツは、翌年この劇場で行われた楽劇『トリスタンとイゾルデ』の世界初演に参加するはめとなり、練習中に作曲家と衝突を繰り返しました。もしシュトラウスがもう少し遅く生まれていたら、仇敵と同じリヒャルトという名前をもらうことはなかったかもしれません。
 私がミュンヘンに住んでいた当時、醸造所の跡地にビール会社直営のレストランがあり、ビールはそこへ毎朝郊外の工場から馬車でゆっくりとチリンチリンと鈴を鳴らしながら運ばれていました。のどかな伝統だなと微笑ましく思ったことを覚えています。この一帯は数年前に再開発され近代的なガラス張りのショッピングセンターへと生まれ変わりました。生誕地を示す銘板は残ったようです。
 シュトラウスは14,5歳の頃に、ミュンヘンの南約80キロの田舎町ガルミッシュを拠点に登山をしました。『アルプス交響曲』はその際の思い出が1915年になって結実したものです。ガルミッシュはオーストリアとの国境にそびえるドイツ最高峰2962mのツークシュピッツェへの玄関口にあたりますが、彼がどの山に登ったのか定かではありません。1906年、シュトラウスは大ヒットした歌劇『サロメ』の印税でこの町に土地を買い、歌劇『エレクトラ』以降の作曲活動の拠点としました。ガルミッシュへはミュンヘン中央駅から列車で約1時間20分。1936年の冬季オリンピックを開催したことで知られます。町外れにあるシュトラウス家の敷地は広大で、木々に隠れて道路側からは屋敷をうまく写真に撮ることができませんでした。庭には失敗に終わった歌劇『グントラム』の主人公の墓があるそうです(もちろんシュトラウス流の冗談です)。訪問当時は息子フランツ夫人アリーチェが存命の頃でしたが、ぶしつけにベルを鳴らして訪問するのも気が引けて、周辺を散策しただけで帰りました。RとSがデザインされている門が印象的でした。
 第一次世界大戦の敗戦でオーストリアは共和制になり、宮廷歌劇場は国立歌劇場となりました。歌劇場は強力なリーダーシップを発揮できる人材を求めて、シュトラウスとフランツ・シャルクの2人の総監督を迎えることにしました。共同監督時代の最大の成果は、1919年10月10日に行われたシュトラウスの歌劇『影のない女』の世界初演(シャルク指揮)です。しかし シュトラウスは作曲と演奏活動のためウィーンを留守にすることが多く、しだいにシャルクとの間に対立が生じて、1924年10月31日をもって総監督を退きました。
 シュトラウスはウィーン市と契約を結んでベルヴェデーレ宮殿に隣接した土地を借り、1922-24年にかけて大きな屋敷を建てました。その後彼はこの御殿を所有することにし、交渉の結果、100回ノーギャラで指揮する条件でシュトラウスの私有財産となりました。この家は現在オランダ大使館の所有となっています。私は生誕100年を記念してウィーン・フィルが寄贈した銘板があると知り、写真を撮ろうと出かけました。3mはあろうかと思われる塀にたじろぎましたが、私邸ではないことだし、だいぶ度胸もついていたので思い切ってベルを鳴らして交渉し、なんとか写真を撮ることに成功しました。「リヒャルト・シュトラウス(1864-1964年) 尊敬される巨匠の100回目の誕生日にウィーン・フィルハーモニー管弦楽団」とあります。
 
写真左から
:R・シュトラウスの家 Zoeppritzstraße 42, Garmisch
:R・シュトラウス御殿 Jacquingasse 8-10, Wien
:銘板
 
 
 
音楽ジャーナリスト 長島 喜一郎
「プログラム・マガジン」2018年7・8月号掲載
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