大阪交響楽団 2016年度 定期演奏会 曲目解説

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第207回 定期演奏会   1月18日(水)
シズオ・Z・クワハラ
成田 達輝

2017年1月18日(水)19時00分開演 
 

アーロン・ジェイ・カーニス(1960-)
熱すぎるトッカータ (1996)


  アーロン・ジェイ・カーニスは1960年フィラデルフィアに生まれ、アメリカでは代表的な作曲家。高校時代からラジオを愛聴し、ジャズ、ミニマル、アップタウン、アイリッシュ民族曲など様々な作品に影響された事もあり、カーニスの作曲スタイルは執筆する度に変わっている。1996年に書かれたこの「Too Hot Toccata」(熱すぎるトッカータ)はバルトーク作曲「管弦楽のための協奏曲」の影響を受け1つ1つの楽器がソロ奏者のように扱われ、オーケストラの実力が試される曲だ。6分という短い作品だが、盛り沢山の内容が詰まった曲だと感じる。スタイル的にはリズムに重点をおきながらも、時にはジャズに影響される部分なども現れる。
  曲は3部に分かれており、まずはテーマの紹介からすぐさまカノンが始まりテーマが重なり合ってくる。複雑なリズム感を持った伴奏の上を次々と色々な楽器がソロを演奏し始める。中間部では美しい旋律の中、また様々な楽器が重複しながらソロを演奏していく。最後は曲のクライマックスを迎え、よりリズミックに盛り上がるが、複雑なリズムで拍に合わせるのが困難な部分でもある。
  この作品について作曲家は次のように語っている。
「私はセントポール室内楽団のコンポーザー・イン・レジデンスから退任するにあたって、この曲を作曲しました。この作品は首席奏者や様々なオーケストラ・セクションをソリストのように扱います。とても難しいホンキートンク・ピアノソロや極めて困難なクラリネットソロ、重要なピッコロトランペットのパート、技巧的な打楽器演奏などを盛り込んでいます。非常に活発的な曲で、とてつもなく高いエネルギーは手に負えないほどの流れになりますが、中間部でゆったりとした箇所を作りバランスをとっています。」
 
   作曲年代 1996年
 初  演 1996年9月6日 アメリカ・ミネソタ州セントポール市にて Hugh Wolff指揮
 楽器編成
 フルート2(ピッコロ1持ち替え)、オーボエ2、クラリネット1(Esクラリネット1持ち替え)、バスクラリネット1、
ファゴット2、ホルン2、トランペット2、ティンパニ、打楽器2、ピアノ、弦五部

(C)シズオ・Z・クワハラ(指揮者)(無断転載を禁じる)
 

酒井 健治(1977-)
ヴァイオリン協奏曲「G線上で」(2011/2015)

(第23回芥川作曲賞受賞記念サントリー芸術財団委嘱作品)

  ヴァイオリン協奏曲「G線上で」は、2012年に開催されたエリザベート王妃国際音楽コンクールのファイナルで課題曲として演奏されたものに加筆、拡大したものである。このコンクールで初めて出会った素晴らしい音楽家であり、この作品のソリストを務める成田達輝さんに、課題曲となった作品を第一楽章とし、その後第二楽章、終楽章を加えた決定稿を献呈している。
  2011年に書かれ第一楽章で提示された様々なモチーフは、4年の時を経て、書き加えられた第二楽章「レント」、第三楽章「フィナーレ」において再び使用され、この作品の統一感を持たせながらも、異なるシチュエーションにおいて使用されている。モチーフが時間経過と共に展開されていく事により、第一楽章から終楽章に向けて大きな一つの流れを作る事を念頭に置いたのである。近年の作品では、第一楽章を書いた当時には無かった協和音をモチーフにする事が増え、第二楽章において協和音が全く現れない第一楽章と終楽章の移行部として機能し、技巧的な長いカデンツァを経た後に迎える終楽章では協和音が楽章全体を支配する。こういった展開はベートーヴェン等の暗から明へ進行するドラマ性と比較出来るのではと思う。
  三楽章構成であり、第一楽章が最も重く、第三楽章が軽く作品を締めくくるという、それぞれの楽章間の力学的な配置は、前述のドラマ性と共にクラシック音楽の協奏曲に参照点が見て取れるが、全楽章で統一をはかるクラシカルな形式を尊重しつつも、第一楽章で提示されたモチーフが終楽章まで展開、更新し続けるという不可逆的な進行が共存する一見アンビヴァレントな発想を一つの作品に閉じ込めようと試みた。
 

   作曲年代
 2011-2015年
 初  演
 2015年8月30日 サントリーホールにて成田達輝のソロ、杉山洋一指揮新日本フィルハーモニー交響楽団
 楽器編成
 独奏ヴァイオリン、フルート2(ピッコロ2持ち替え)、オーボエ2、クラリネット2(バスクラリネット1持ち替え)、
ファゴット2、ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、ティンパニ、打楽器3、ハープ、ピアノ(チェレスタ)、
弦五部
 
(C)酒井 健治(作曲家)(無断転載を禁じる)
 
 
エクトル・ベルリオーズ(1803-1869)
幻想交響曲 作品14


  今となっては大抵のオーケストラで標準的なレパートリーになっているエクトル・ベルリオーズ(1803-1869)の《幻想交響曲》ですが、作品の誕生当時の感覚では驚くべき革新性を持った音楽でした。まず物語を音楽で描くために、「固定楽想」と呼ばれるメロディが何度も形を変えて登場します。「感受性が強く、想像力にあふれた若き芸術家が、恋の苦悩で阿片自殺を図る。彼は死に至らなかったかわりに、奇妙な夢を見る」という内容が、この作品で表現されたストーリーでした。どこにその「固定楽想」が登場するのかは後で触れますが、注目すべき楽器の用い方をあちこちで指摘することができます。第2楽章でハープが2台使われ(楽譜の指定は2パートでそれぞれ複数台)、第3楽章はオーボエが舞台の外から聴こえてきます。さらに、遠くから聞こえる雷が、4人の(!)ティンパニ演奏で表現されます。第5楽章ではこれも舞台の外から鐘が鳴り、弦楽器が弓の木の部分で弦をこする「コル・レーニョ」という奏法に注目です。それぞれ2組のティンパニと大太鼓がとどろくフィナーレも、当時としては破天荒なものでした。こうした新しい音楽が、ベートーヴェンが亡くなってからまだ3年しか経っていない1830年(27歳)に誕生したということは、歴史を振り返って考えると、大幅に時代を先取りした音楽だったということになるのです。より正確に記述すれば、交響曲という枠組みの中で、ハープや鐘など、これまではオペラでしか用いてこなかった楽器を使い、さらに物語を直接取り込んだことが革新的だったのです。
  初演の前夜となる12月4日の夜にベルリオーズは初めてフランツ・リスト(1811-1886)と面会しました。リストはベルリオーズの8歳年下で、当時は19歳の青年です。「私はリストに、ゲーテの『ファウスト』の話をしたが彼はまだ読んでいないと言った。やがてリストは私同様に、『ファウスト』に熱中することになる」と、この時のことをベルリオーズ自身が回想録に書き残しています。リストは《幻想交響曲》の初演を聴き、翌日にかなり興奮した様子でベルリオーズと夕食を共にしました。その熱狂ぶりは、ベルリオーズが閉口したほどだったそうです。リストが魅了されたのは、前述した「固定楽想」を用いて「標題(プログラム)」を描くという方法でした。リスト自身も後に交響詩の創作をこの方法で手がけることになります。
  ところでベルリオーズは自身の実体験をもとに、ストーリーを設定しています。1827年に、パリに来演したイギリスの劇団のシェイクスピア『ハムレット』を観て、ベルリオーズは衝撃を受けたのです。そこでヒロインのオフェーリアを演じた人気女優、ハリエット・スミスソンに激しい恋心を抱きました。ベルリオーズはスミスソンをしつこく追い回します。現代でいえば、相当悪質なストーカーです。手紙の受け取りを拒否され、面会の申し出は相手にもされません。名も知れぬ作曲家が人気女優に迫るのですから当然でしょう。ベルリオーズの中で恋心は次第に憎しみへと変わります。犯罪を起こさなかっただけ、正常な精神の持ち主だったのは幸いでした。作曲家らしく音楽作品の中で復讐を果たそうとしたのです。それがこの《幻想交響曲》でした。この話に後日談があります。1832年に《幻想交響曲》の続編として《リリック・モノドラマ「レリオ」》が書かれ、2作が「ある芸術家の生涯におけるエピソード」として一対の作品とされました。驚くべきなのは、これがきっかけになって、ベルリオーズはスミスソンと結婚するのです。1833年のことでした。ただし幻想の恋は、現実の中では長続きしません。たった6年で二人は破局を迎えることとなります。
  《幻想交響曲》は5つの楽章で構成されました。第1楽章〈夢、情熱〉には、想いを寄せる相手への憧れが、まだ希望のもとにあらわれます。長い序奏の後にフルートとヴァイオリンで奏でられるのが「固定楽想」です。第2楽章〈舞踏会〉の夢見るようなワルツの中で、主人公は恋する相手を見つけ出しました。「固定楽想」は木管楽器にあらわれます。第3楽章〈野の風景〉では風景の中の距離感が音から見えてくるようです。「固定楽想」は沈んだ響きの中で少しだけ登場します。第4楽章〈断頭台への行進〉から世界が変わります。ホルンがうめき声をあげ、ファゴットがもだえ苦しみ、最後には「固定楽想」がクラリネットで聴こえたかと思うと、ギロチンが落ちるという恐ろしい音楽になりました。第5楽章の〈ワルプルギスの夜の夢〉という題名は、ゲーテの『ファウスト』から採られ、「魔女の饗宴」を表現しています。クラリネットが「固定楽想」を奏で、死を暗示するためにグレゴリオ聖歌の「怒りの日」のメロディが鳴り響くと、最後に狂気のフィナーレが待ち構えています。
 
   作曲年代
 1830年
 初  演  1830年12月5日 フランソワ・アブネック指揮 パリ音楽院のホール(当時)にて
 楽器編成
 フルート2(ピッコロ1持ち替え)、オーボエ2(イングリッシュホルン1持ち替え)、
クラリネット2(小クラリネット1持ち替え)、ファゴット4、ホルン4、トランペット2、コルネット2、
トロンボーン3、テューバ2(本来はオフィクレイド2)、ティンパニ2、シンバル、大太鼓2、小太鼓、鐘、
ハープ2、弦五部

(C)小味渕 彦之(音楽学、音楽評論)(無断転載を禁じる)
  
                                
 
 
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