大阪交響楽団 2016年度 定期演奏会 曲目解説

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第202回 定期演奏会   5月10日(火)
外山 雄三

外山雄三 ミュージック・アドバイザー就任記念
 
2016年5月10日(火)19時00分開演
 
 
外山雄三(1931-)
オーケストラのための“玄奥”-2014~2015-
(諏訪交響楽団創立90周年記念委嘱作品)

  1952年に学校を卒業してNHK交響楽団に入団、それ以来オーケストラと縁が切れたことはない。だから1953年に書いた初めてのオーケストラ作品“Kleine Symphonie” から、絶え間なくオーケストラのための作品が生まれているし、どれも、すぐに初演してもらえるという幸運に恵まれてきた。入団したての若造に、ちょっとした編曲や小品の作曲を頼んでくれた怖い先輩たちは、こいつをなんとか一人前にしてやろうと思っていてくださったのだと、後になって判った。N響指揮者陣の先輩は尾高尚忠、山田和男、高田信一という素晴らしい方たちで、しかも皆さん、優れた作曲家でもあった。うかうかしてはいられないとは思ったものの、どうしたらいいか判らなかったが、そんな時にさりげなく重要な課題をくださるのが、幼児の時からお世話になった有馬大五郎先生であった。この作品を私に委嘱した諏訪のオーケストラの創立も、有馬先生のご縁に繋がっているのである。
  「玄奥」(げんおう)という言葉の意味は「奥深くて、はかりしれないこと」であるが、この作品に難解さはない。諏訪にゆかりのある民謡の旋律やリズムも現れるが、それは1950年以来ほとんどすべての作品で、素材として民謡を強く意識していることの一端である。ヨーロッパで生まれ、発展してきた音楽の、最も豊かな象徴としての「オーケストラ」に日本の民族音楽を重ね合わせて鳴り響かせることは、今後も私の課題であり続けるだろう。
 
●作曲年代 2014〜2015年
 
●初演
2015年5月30日 
長野・カノラホール(岡谷市文化会館)
濱一指揮 諏訪交響楽団第157回定期演奏会
 
●楽器編成
フルート2、ピッコロ、オーボエ2、クラリネット2、
ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、      テューバ、ティンパニ、シンバル、大太鼓、ボンゴ、
弦五部
 
        (C)外山雄三(無断転載を禁じる)                         
             
フランシス・プーランク(1899-1963)
バレエ組曲「模範的な動物たち」

  パリに生まれたフランシス・プーランク(1899-1963)が成長したのは、第一次世界大戦(1914-18)前後の混乱の時代だった。第一次世界大戦とは、「古きよきヨーロッパ」が破壊された戦争であり、これを境として19世紀的なロマン主義は一挙に過去のものとなった。
  それまでフランスの作曲家たちはワーグナーをはじめとするドイツ音楽の強い影響下にあった。今日ではフランスを代表する作曲家と見なされているドビュッシーさえ例外ではなかった。が、ドイツ・ロマン主義の壮大志向、強い感情表現、思わせぶりは、プーランクの世代にはもはや古臭く感じられた。
  プーランクは「6人組」と呼ばれた新進作曲家グループのひとりだった。特に彼とダリウス・ミヨーは、重々しいドイツ音楽とは別の方向性、すなわち明快で、軽やかで、色彩感に富み、ユーモアを持つ作品を好んで書いた。と同時に、プーランクは敬虔で清らかな宗教音楽や悲劇的なオペラにも関心を示した。
  「模範的な動物たち」は、そうしたプーランクの多彩な音楽性がよく示された作品だ。最初バレエ音楽として構想され、1942年にパリのオペラ座で初演された。ちょうどこの時期、ヨーロッパは再び戦乱に巻き込まれ、フランスはナチス・ドイツに占領されていた。そのような状況下でプーランクの霊感のもととなったのは、フランス人にとって古典中の古典である17世紀の詩人ラ・フォンテーヌの寓話集だった。のちに組曲が編まれ、今日ではこの版が演奏されることがほとんどである(なお、曲名のmodèlesというフランス語は、時には「典型的」とも訳され、日本語曲名が一定しないようだが、今回念のために作品の内容ともどもフランス人に確認し、「模範的」が適切という返答を得た。「模範的」としたほうがひねりが効いた曲名になるが、いずれにせよ皮肉やユーモアが込められたタイトルであることは間違いない)。
  まずは「非常におだやかに」と指示された「夜明け」で始まる。3/4拍子で、有名なグリーグ「ペール・ギュント」の朝の音楽を連想させる。プーランクらしいゴージャスな色彩感とともに、暗鬱で劇的な緊張もはらんでいる。
  続く「恋するライオン」では弦楽器が官能的にうねるが、とはいえ、描かれているのはライオンである。時折、金管楽器が勇ましい鳴き声を模倣する。
  音楽は一転して滑稽味を帯びた一種のスケルツォ、「中年男と2人の愛人」になる。男は白髪になりかけている年齢だ。若い愛人は白髪を抜き、年老いた愛人はまだ黒い髪の毛を引っ張る。
  「死(神)ときこり」では、老いたきこりが死神(バレエでは仮面をつけたエレガントな女性によって踊られる)を呼び出す。だが、最後の最後、老人は死ではなく、たとえ惨めではあっても生きるほうを選ぶ。
  「2羽のおんどり」では夏の朝の鳥小屋でにわとりが騒ぐ様子が活写され、最後の「昼食」へ休みなく続く。最初の静かな「夜明け」の音楽がより大がかりになって回帰するわけだが、壮大に盛り上がる音楽が「昼食」と名付けられているのが可笑しい。暑いさなかの農作業に疲労した農夫たちが、祈りのあとで午餐を取る様子を表す。
  本来バレエのために書かれた作品ということもあって具体的な様子や動きが手際よく描写されていることに加え、てきぱき進行していくスピード感は、モダンな時代ならではだ。この作品は、プーランクの個性を鮮やかに示した傑作として好評をもって迎えられた。

●作曲年代 1940〜1942年
 
●初演
1942年8月8日 パリ・オペラ座(バレエ版)
ロジェ・デゾルミエール指揮
 
●楽器編成
ピッコロ、フルート2、オーボエ2、コール・アングレ、クラリネット(Es管)、クラリネット(B管)2、バス・クラリネット、ファゴット3、コントラファゴット、ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、テューバ、ティンパニ、トライアングル、シンバル、大太鼓、中太鼓、小太鼓、タンブリン、クロタル、タムタム、グロッケンシュピール、ジュ・ドゥ・タンブル、木琴、ピアノ、チェレスタ、ハープ2、弦五部 
 
        (C)許 光俊(音楽評論家)(無断転載を禁じる)
 
                

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)
交響曲 第3番 変ホ長調 作品55 「英雄」


  ルートヴィヒ・ベートーヴェン(1770-1827)の交響曲第3番「英雄」は、原語に由来するイタリア語「エロイカ」(英語ではヒロイックに相当する)で呼ばれることも多い。正式な曲名は「英雄的交響曲、ひとりの偉大な人物の思い出に捧げるための作品」。
ボンに生まれ、天才少年ピアニストとして活躍を始めたベートーヴェンは、やがてウィーンに居を定めた。彼が模範としたひとりは、当然のことながら、当時最高の作曲家と目され、同じ町に住んでいたハイドンだった。急〜緩〜舞曲〜急という4つの楽章を配置するウィーン古典派交響曲の典型的な形はハイドンによって確立され、ベートーヴェンの交響曲もほぼこれに沿って作られている。
  とはいえ、フランス革命が起こり、王政が倒され、市民の平等が達成されるという世界史的な大事件を生々しく経験した世代に属するベートーヴェンが目指す音楽は、宮廷での活動になじんだ世代のそれとは決定的に異なっていた。彼は先達の作品を参考としながらも、より奔放でエネルギッシュで市民的な音楽に向かった。そのための大きな一歩が、「英雄」にほかならない。この作品では表現の振幅が拡大され、さらに長さもハイドンやモーツァルトの交響曲の倍にも及ぶこととなった。
  「英雄」が作られたのは、ナポレオンが活躍していた1804年である。「英雄」という副題とナポレオンの関係には諸説あり、この作品が最初は彼に献呈するために構想されたのは事実のようである。ただし、ナポレオンを描き礼賛する曲を書く考えは作曲者にはなかったようだ。ベートーヴェンの同時代人でドイツの哲学者ヘーゲルは初めてナポレオンを見たとき、「世界精神が馬に乗って通る」という有名な言葉を述べた。おそらくベートーヴェンがナポレオンに感じたのも、何か漠然とした、それまでにない人間や精神のあり方ではなかったろうか。とするなら、「英雄」は特定の人物を描いたものではなく、もっと抽象的な英雄性をイメージした音楽ということになろう。
  第1楽章は天翔けるような自由さ、力強さを持つ。流れは雄大であり、それまでリズム楽器的に用いられることが多かった金管楽器も朗々と歌う。この楽章には「アレグロ・コン・ブリオ」というテンポ指定があるが、コン・ブリオとは、生気をもってという意味である。この表現は「英雄」によって非常に有名になり、これからあと、作曲家が「コン・ブリオ」と譜面に記すときには、誰もがおのずと「英雄」を連想することになった。アレグロという快速の指示に、さらにコン・ブリオと付け加えたベートーヴェンの真意は、ぐいぐいと前進する若々しい音楽を聴いてみればおのずと明らかだろう。ソナタ形式で書かれているが、その中間部分に当たる展開部が当時としては異例なほど長く、闘争的・葛藤的な印象を強める。
  第2楽章はアダージョ・アッサイ(非常に遅く)と記された葬送行進曲。開放的な気分に満たされた第1楽章とは打って変わった沈痛な音楽である。三部形式に近く、悲劇的な高揚を築き上げたのち、再び静寂へと戻っていく。
  第3楽章はアレグロ・ヴィヴァーチェ(快活な急速)のスケルツォ。前楽章とは大きく趣を異にした明朗な音楽。特に中間部分では、ホルンが軍隊ラッパのように豪快に吹き鳴らされるのが印象的である。
  第4楽章フィナーレは、アレグロ・モルト(非常に快速)で開始される、ベートーヴェンお得意の変奏曲。その主題はすでに「プロメテウスの創造物」という作品で使われていたもので、さまざまな姿を示したのち、静かな平和が訪れ、そこから鮮やかなコーダによって曲は閉じられる。

●作曲年代 1803〜1804年

●初演
(公開初演)1805年4月7日、ウィーンのアン・デア・ウィーン劇場
 
●楽器編成
フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン3、   トランペット2、ティンパニ、弦五部

  
                  (C) 許 光俊(音楽評論家)   (無断転載を禁じる)
 
 
 
 
                                     
 
 
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